「YOU ARE (NOT) ALONE」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 Casaさんの映画レビュー(感想・評価)
YOU ARE (NOT) ALONE
物語は確かにTVアニメ版の1~6話に忠実。画に関してもレイアウトを流用しているので構図が同じだったりするが、ほとんどが手直しされているようなので、TVアニメを見ていた人なら“見たことがあるのにどこか新しい”という不思議な感覚も味わえる。
物語の流れは基本的にTVと同じとはいえ、後半、ほぼ新作カットで展開され、劇場映画としてTVでは表現しきれなかった迫力と物量感を見事に描いた「ヤシマ作戦」は、1本の映画の中でのクライマックスとして十二分に機能する。
ネタバレになるが、「なぜ自分がやらなくてはいけないのか」と悩むシンジに、ネルフが抱えている“秘密”を見せ(TV版では後半にならないと明かされない)、「戦っているのは、苦しんでいるのはひとりではない」ということを理解させる。つまりベタに言えば「みんなで力を合わせて敵を倒そう」というムードがやんわりと演出されることで、エンターテインメント性が増している。加えて言えば、使徒ラミエルの大幅な能力拡大は、ラミエルが本作におけるラスボス的な存在感を放ち、これを撃退しての幕引きは大いにカタルシスをもたらす。また、一方で悩むシンジに「自分のことは自分で決めろ」と叱咤するシーンは健在であり、つまり本作のテーマはそのまんまだが「人はひとりだが、人はひとりではない」ということ。英語タイトルの「YOU ARE (NOT) ALONE」は実に言いえて妙だ。
新作カットに関して言えば、画コンテを後半のヤシマ作戦部分を特撮畑出身の樋口真嗣が務め、前半の彷徨するシンジの部分を、「交響詩篇エウレカセブン」で14歳の少年の悩める心の成長と軌跡を描いてみせた京田知己が担当しているのは、それぞれの特色が表れていて面白いと思う。
しかし、TVアニメを見ていたファンにとっては一番興奮するのは、やはり「次回予告」に違いないが(笑)。