劇場公開日 2007年7月28日

「原作同様に瑞々しいが、掘り下げはやや浅い」天然コケッコー Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5原作同様に瑞々しいが、掘り下げはやや浅い

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

萌える

総合:70点
ストーリー: 65
キャスト: 80
演出: 75
ビジュアル: 75
音楽: 70

 現実の世界では劇的な大事件ばかりが起きるわけではない。だが後になって考えると小さなことが、子供のころには大きなことだったりする。あるいは子供のころにはささいなことでも、後から考えると大切なことだったりする。原作を途中まで読んだことがある。何も無い過疎の田舎を舞台にして、そのようなちょっとしたことに心を動かす中学生を見事に描いた、とても新鮮で瑞々しい良い作品だった。

 さて映画のほうはどうだろうか。時間が飛び飛びになりながら、小さな事件が淡々と続いていく。少女の感じるままの日常の心の揺らめきが、のどかな町に原作同様に描かれる。自分の理想の冬用のコートを欲しがってみたり、髪型のことでいけない発言をして友人の気分を害したことで自分自身が傷ついてみたり。恋愛対象になるような異性すらいない田舎で、突然やってきた転校生が持ち込む変化。主人公の右田そよを演じる夏帆が、小さな世界で自分なりに精一杯生きる少女の存在感を表現していて、映画全体のそんな瑞々しい雰囲気をうまく作りだしていた。
 だがやはり映画としての時間的制約があるからだろう、原作よりも一つ一つの出来事の掘り下げがやや甘くなっているようにも感じた。原作にあるけれど映画にない物語もいくつかあって、だから映画を見ていて彼らの共有する出来事も少なくなって関係が薄く見える。そういいつつもそれでも楽しめる作品でした。こういうのいいなあと、すっかり汚れきった大人の私なりに思ったのでした。

 映像は町の自然や田舎の家々を撮影して積極的に使うことにより、のどかで小さな世界をうまく表現している。場面場面で植物とかを映し出して、四季の移ろいを教える。音楽はあまり使われず、むしろ自然の音や生活の雑音で雰囲気を作り出している。でしゃばりすぎない音楽の演出はむしろ好感が持てた。

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Cape God