「研究員が誘拐されるという難事件。犯人は白黒つけがたい」ルネッサンス kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
研究員が誘拐されるという難事件。犯人は白黒つけがたい
新世代映像“デジタル・モーション・グラフィック”を体験してきました。モーション・キャプチャーの俳優名もクレジットされていたし、登場人物の動きはとてもリアル。ゼメキスがやってのけたアニメから彩度を無くしてしまっただけなのか?と考えてもみるのですが、主役級の人はみなアメコミキャラのようなマンガチックさが感じられるのです。
近未来の映像は、『マイノリティ・リポート』に出てきたようなハイテク機器がみなモノトーンになっているし、ホログラムや透明化する人間(ステルス・スーツ?)が不気味に映像に溶け込んでしまっている。監督が『AKIRA』(じいさんと早老病)や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の影響も受けていると語っているし、『ブレードランナー』や『シンシティ』にも雰囲気を似せてある。また、1950年代のフィルム・ノワールを基本にして、現代社会の不安要素を浮き彫りにさせているため、人間の温かさはなかなか感じられない。被害者の姉ビスレーンやムラー博士に感情移入させることだってできたのに・・・
2Dの絵に欠かせない輪郭の線。それを排して、光と影が3D感を一層高めてくれる。そして、この輪郭の欠如が不安感を煽り、サスペンス度をも増しているのです。唯一人間の温かさが感じられるのは、老人たちの皺の影だったりするのですが、不老不死を求めてやまない女性研究員と対照的なのが面白い。不老不死を悪事に利用するという敵の存在よりも、人間らしく生きることの大切さを訴えているかのようでした。監督は言及してなかったようですが、『カリオストロの城』も参考にしたのかなぁ・・・
斬新なモノクロ映像にはしばらくすると慣れてくる。次第に、女性研究員を誘拐したのは誰なのかとワクワクもしてくるのですが、アヴァロン社の透明人間がうざすぎる。こんなのが作れるんだったら、もう充分だろうに・・・
【2007年9月映画館にて】