「小さな暴力の連鎖はやがてうねりを伴う」松ヶ根乱射事件 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
小さな暴力の連鎖はやがてうねりを伴う
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何も無い田舎町。日々暮らす人々達には何も刺激的な事が無い。
だからみんな心の中にはザワザワしたモノが住み着きそのはけ口をセックスに求め、それを隠す様に“嘘”を付き通している。だから感じる人の気配にはつい驚き不安を感じてしまう。
主人公の周辺に住む人達から発せられる小さな“暴力の連鎖”は、次第に大きなうねりとなって主人公にのしかかって来る。
山下敦弘監督の演出は1980年代の柳町光男監督の『さらば愛しき大地』や『火まつり』を彷彿とさせながらも、この監督独特の空気感とユーモアが渾然一体に同居していて、一気に観客を独自の世界へと誘う手腕は見事だ。
お爺さんが、白痴の女が、金の流通に無知な男女が、だらしない兄弟がそれぞれ説教をされたり、子供に諭す様に見下される。主人公の男がわだかまりを持ち続け、一言意見してやりたかった父親に逆に子供扱いされる皮肉。彼はそのはけ口として“ある生き物”に仕掛けを続けており、いかにもこの監督らしい持ち味のオチが待っている。
父親役の三浦友和が『Mother』以来の得意なダメ親父振りを遺憾なく発揮していた。
(2007年3月1日テアトル新宿)
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