劇場公開日 2006年9月23日

「“上野駅54”というハンドルネーム。これは「上野駅にいるkossy」を表している。」紀子の食卓 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“上野駅54”というハンドルネーム。これは「上野駅にいるkossy」を表している。

2021年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 17歳の女子高生・島原紀子(吹石一恵)は“廃墟ドットコム”というサイトの常連になり、主催者とみられる“上野駅54”に次第に惹かれていく。田舎の生活にも飽きて父親との確執もあったことから“上野駅54”ことクミコに会いに行った。早速、クミコの家族を紹介され、おばあちゃんの家へ向かい、そこでも親しげに紹介される。しかし、彼らは“レンタル家族”。言いかえれば、イメクラの派遣会社でもあるのです。もしかすると小泉改革における自由化路線の一環で、ついに家族まで派遣してもいいことになったのか・・・

 家族の絆、人と人との繋がりが希薄になった現代社会。ぎくしゃくした本物の家族よりも金で雇った家族のほうが安らぎを覚えるといった発想は見事です。「あなたはあなたの関係者ですか?」といった言葉からも窺えるように、自分自身さえ見失ってしまっている世の中。偽物であっても心が落ち着くのであればと、そちらを選ぶ人の気持ちも何となくわかります。しかし、本物と虚構の間で働いている彼女たちも精神的におかしくなって、仕事が上達しステージが上がると大変なことまでやってしまうのです。

 「いっせーの、せっ」と、『自・殺サークル』で行われた54人の女子高生が集団で駅のホームから飛び込むシーンが何度も映し出され、その事件の真相が明らかにされるというオマケつき。「命を粗末にする人は現実社会のほうが圧倒的に多い」とうそぶくサークル主催者の意見はさすがに矛盾してましたが、報酬をもらって偽家族を演じることが人間関係を悪くすることも少ないだろうし、なんとなく納得してしまう。

 物語は章立てとなっていて、登場人物それぞれの視点で一人称ナレーションスタイルを貫いている。これが自己喪失感を上手く表現しているので、159分という長尺も苦にならない。演技においても主演女優もさることながら、父親役の光石研の演技が印象的です。ただ、それぞれが別名を持っているので混乱することもあったのですが、名前はそれほど重要ではありませんでした。

 さすがR15だけあって、かなりのスプラッターがありますので、ご鑑賞の際にはご注意を。

【2007年1月映画館にて】

kossy