「ホラーとしての演出にセンスが無く、突っ込み所も多い駄作」親指さがし Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーとしての演出にセンスが無く、突っ込み所も多い駄作
< 原作未読・映画版のみの評価 >
ホラーやサスペンスといったジャンルにとって大事なのは、やっぱり設定を生かす「演出」。こればっかりは監督にセンスが無いとどうしようもない。
普通、ホテルの廃墟跡で子供が遊んでて行方不明になったら、家出と結論する前に子供が入り込んだり、落ちたりしそうな所を集中的に探すだろ。そもそもなんで知恵は由美子が通気口に隠れた事を警察に言わなかったのか?別に落ちたのは知恵のせいじゃないんだから、言わない理由が分からない。由美子に嫉妬していたからとか、ふざけて押したら落ちたとか、何でもそれらしい理由は付けられるはず。だいたい由美子が死んだのは本人の自業自得であって、助けられなかったどうのと言う以前の問題では。幻覚を見るほどに罪の意識?に捕らわれる原因としては無理がある。
武の背中の手の跡にしても、作中で扱うなら、落ちていく由美子が掴まろうとして引っ掻いた傷跡だったとか、もっと必然性のある「それらしい」演出なんていくらでも考えられるだろう。この辺の設定や演出の甘さがホラーとしての恐怖感を薄めている。
演出面にしても、ボイスチェンジャーで変えたような安っぽい声で「オヤユビヲガエゼ〜」などと言わせたりするところに、監督の恐怖演出に対するセンスの無さを感じる。
登場人物の演技や会話などもヒドい。小学生の頃の「由美子がいなくなったら探してくれる」「うん、絶対に探して見せるよ」なんて会話も「設定のための会話」であり、セリフとして生きていない。
また、序盤ではまだ誰かの悪戯かも知れないのに、「このままじゃ、あたしたち殺されちゃう〜」と早々にパニくってるのにも「アホか」とシラけさせられる。智彦が武に襲われるシーンでも、どうしてスコップを投 げ捨てるのか等、いちいち行動や言動に納得の行く必然性が見られない。
やはりホラーに限らず、監督にセンスが無いと、作品全体の説得力も無くなる事をこの作品が証明している。