「手触りがある」蟻の兵隊 MIDIさんの映画レビュー(感想・評価)
手触りがある
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この映画は、奥村和一という老人に密着したドキュメンタリーである。映画を見ていくうちに、元日本兵であり、残留兵士であった奥村さんという人の人間像が明らかにされていく。その途中で慰安婦問題、靖国問題についても触れられている。私は本当の戦争を知らないが、どのような現場であったのかは、中国の人の説明や、奥村さんの言葉から十分想像が可能である。
奥村さんは戦争は終わったというのに、国の命令で残留兵士として戦い、多くの仲間を失った。裁判所は、残留兵士を認めることはポツダム宣言に自国が違反したことになるために都合が悪いため、その訴え退け、兵は自ら志願して残ったこととして処理しようとした。奥村さんは中国に赴く。そして共産軍と戦った現場でこう言った。「あそこで、仲間が『天皇陛下万歳』と言って死んだのです。なんで志願して行った人間がそんな事を言って死ぬのですか‼︎」。奥村さんの抱える怒り、その苦悩の大きさといったら、計り知れないものがある。
元日本兵の多くが振り返ることを憚られる自身の戦争体験に真っ向から向き合い、自ら答えを出そうとした奥村さんに、私たちは敬意を表さなくてはならない。そして、奥村さんのような、忘れまいとする強い態度でしか、きっと、これから来る戦争を避ける事は出来ないのだ。
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