劇場公開日 2008年11月29日

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「人間の弱さを抉る名作」羅生門 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人間の弱さを抉る名作

2025年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年7月に閉館となる丸の内東映で、『昭和100年映画祭 あの感動をもう一度』と題する名作リバイバル特集を開催していますが、日本映画の名作中の名作である黒澤明監督の「羅生門」を上映していたので、観に行って来ました。以前配信で一度観ているのですが、やはり劇場で観るのは全く趣を異にしており、非常に感激しました。

本作については今さら語るのが憚られるほどに有名ですが、半壊した羅生門の不気味な佇まいをはじめ、三船敏郎や志村喬などの黒澤作品常連俳優たちの演技、芥川龍之介の原作小説の題名の通り真相は”藪の中”となるストーリーの妙味などなど、どれをとっても印象に残る作品であることを再確認しました。

中でも印象的だったのは、三船敏郎扮する盗賊・多襄丸と、森雅之扮する武士・金沢武弘の切り合い。三船と言えば堂々とした殺陣やリーダーシップなど、カッコいい侍像の象徴のような存在です。本作でも最初のうちは豪放磊落な雰囲気を醸し出していたのに、いざ金沢武弘と斬り合いになると、その剣先はブレブレで腰は引けている姿は情けない限り。その落差がなんとも言えないものでした。そして各登場人物が、外面と内面のギャップを隠すために吐いた嘘が積み重なり、何が真相なんだか分からなくなるところが、何か現実の生活においてもあるように思えて怖くなりました。

そんな訳で、本作の評価は★4.6とします。

鶏
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