「やはり名作」羅生門 naokiさんの映画レビュー(感想・評価)
やはり名作
10代の頃、TVで最後の方を観ましたが何か意味が分からない映画でした。上田吉二郎の下人が志村喬の杣(そま)売りの男を罵る場面が印象に残っております「なんだ、お前もいっしょじゃないか!ははは(笑)」まぁ楽しくない映画なんだな・・・しかし、この映画は海外で高く評価されベネチア映画祭で金獅子賞をいただいたそうです。やっぱり難しい映画は欧米のインテリに受けるんだなと勝手に解釈してました。
今回はじめて映画館で、この映画を観て想像以上に面白かったです。大まかなストーリーは忘れてしまったのですが、雨宿りで杣売りと旅法師が奉行所での回想シーンで始まり山中で起きた武士の殺害事件に関わった目撃者や関係者の証言がフラッシュバックで何パターンも再現されるのです。証言が皆食い違っており真実は藪の中(原作:芥川龍之介)後に羅生門スタイルと呼ばれベルトルッチのデビュー作「殺し」や近年ではジュスティーヌ・トリエの「落下の解剖学」が、これを踏まえております。
役者陣もなんかギラギラして凄い。京マチ子は街にでも歩いていそうな今でも通用する美しさ。三船敏朗の多襄丸は観るまで荒々しいイメージがありましたが、それだけでなく男前で繊細な演技で幅広い役者さんですね。志村喬の杣売りは山道を歩くシーンが印象に残りました。これから杣売りに行くよ〜という感じが出てます。「七人の侍」でエキストラ役だった仲代達矢がお侍役で歩くシーン(画面の端っこなのに)何度もNGを出されたエピソードを知っているだけに志村喬は何度も歩く練習したのだろうと憶測してしまいます。森雅之の金沢武弘もクールですね。金沢と多襄丸が最後取っ組み合いになるのは凄い!シン仮面ライダーの池松壮亮と森山未來の激闘みたいな。一番びっくりしたのは旅法師を千秋実が演じていたのは最後まで分かりませんでした。
撮影は宮川一夫・・・光と影を生かした映像で、木陰が印象的な山中の屋外ロケ、あと奉行所場面の雲の流れ、羅生門での大雨が演技に一役買ってます。ウェルズ「市民ケーン」、ドライヤー「裁かれるジャンヌ」、ベルイマン「野いちご」、フェリーニ「8 1/2」、フラー「裸のキッス」など白黒映画のベスト(他にもいろいろありますが)に入る素晴らしい映像でした。映画館で観れてよかったです。
>真実は藪の中(原作:芥川龍之介)後に羅生門スタイルと呼ばれベルトルッチのデビュー作「殺し」や近年ではジュスティーヌ・トリエの「落下の解剖学」が、これを踏まえております。
なるほど!たしかに「落下の解剖学」とその点で同じジャンルといえますね。はたと膝を打ちました。