「芥川龍之介の知性の鋭さ」羅生門 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
芥川龍之介の知性の鋭さ
総合:85点
ストーリー: 95
キャスト: 85
演出: 85
ビジュアル: 60
音楽: 65
「羅生門」という題だが、実際の原作は同じ芥川龍之介作品でも「藪の中」が正しい。それに付け加えて「羅生門」の話の一部を取り入れている。今作品はとにかく芥川の原作の素晴らしさに尽きる。原作は人が自分を正当化して守るためにはいかようにもなれるという、人のもつ本質的な弱さと狡さが彼の知性によってえぐりだされた傑作であった。そして羅生門を絡ませて少しばかりの救いをもたらしたのが原作との大きな違いか。
映画としてはわざとらしい演技と大袈裟な台詞回しが少々気になる。自然な演技というよりも、自分の主張をしてそれを通すために強調された演技である。最初はそれが随分と大根役者というか安い演技だと思った。
だがそれは演技者による、安い演技をする役柄を演じる高度な演技なのかもしれない。ここは誰もが嘘つきで誰一人として本当のことなど言ってはいないかもしれない世界である。自分の嘘の主張を通すための演技をする役柄を演じているのが出演者なのだから、だからこのような不自然なまでの大袈裟な台詞回しになるのかと思った。彼らは真実を言っているのではなく、嘘を言っているから自然な喋り方が出来ない。真実を隠して自分に都合のいい話をしてそれを信じてもらおうとしているからこその演技。そう解釈すればこの不自然な台詞回しにも納得がいくし、それを演じているのが凄い。
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