劇場公開日 2008年11月29日

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「日本映画の至宝を生意気にもレビューします……」羅生門 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5日本映画の至宝を生意気にもレビューします……

2010年1月11日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

怖い

知的

遂に買ったぞ黒澤映画のブルーレイ!!
昔観たDVD版はいかんせん音質も画質も悪くて鑑賞に苦労したが、BDだと新作かってくらいの修復度で顎が外れるほど驚愕。日本語字幕も助かります(笑)。
BDの宣伝はここまでにして、生意気にも黒澤映画のレビューをさせていただきます。

一つの事件を複数の視点で追ういわゆる『羅生門スタイル』の元祖であり、恐らくはそのスタイルを用いた映画の中で最も成功した例。

公開当時は斬新な撮影技法の数々で世界を驚かせたという本作だが、現代映画に馴れた僕のような若造にはその凄さはイマイチ分からず、物語のテンポもまったり見えてしまう。
が、それでも1カット1カット画面端まで力が漲っているような見事な画作りは圧巻だ。たった1つの殺人事件が、時代を超えたテーマを伝える一種の寓話としてとてつもない重厚さで語られるのだ。

原作は芥川龍之介の『羅生門』と『薮の中』。是非とも後者を読んでからの鑑賞をオススメ。
2つの作品を巧みに融合させた上、『薮の中』の結末に驚きのヒネリを加えてテーマを深化させ、人間の卑小さや身勝手さを痛烈に描きながらも、最後に一抹の希望を残すその器の大きさ。まさしく桁違いの映画だ。

真の傑作はいつの時代に観ても面白い!
未見の方は、是非。

浮遊きびなご