「黒澤映画初心者に」羅生門 Toshiさんの映画レビュー(感想・評価)
黒澤映画初心者に
世界が日本映画を認知するきっかけとなった映画史的に極めて重要な黒澤明の代表作のひとつ。
本作は橋本忍が芥川龍之介の「藪の中」を脚本化した「雌雄」という作品に同じ芥川の「羅生門」のエッセンスを加えて成立している。橋本の脚本が映画にするには短かすぎたかららしい。ストーリーはとても観念的で、分かりやすい物語しか理解しないひとには向かない。しかし映画好きなら映画が英語ではmotion pictureとも呼ばれる意味が染み込んでくるはず。
斬新なカメラワークと実験的な殺陣。セリフは簡潔で少ない。むしろ俳優の動きとそれを追うカメラがこの映画の魅力。まさにmotion picture。海外で絶賛された理由のひとつだ。
昨今のひとはモノクロの映画がダメらしい。しかし黒澤映画の多くはモノクロ。それだけの理由で観ないのはもったいない。この映画は短いし、観念的ではあるが小難しいストーリーでもない。黒澤映画を最初に観るにはうってつけ。モノクロ映画も良いとなったら、「生きる」や「七人の侍」も観てください。そして小津安二郎や成瀬巳喜男や山中貞雄の名作も。あなたの映画体験がさらに豊かになります。
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