「アンダルシアの雌犬」欲望のあいまいな対象 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
アンダルシアの雌犬
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ルイス・ブニュエルの遺作だが、随分前に見たきりなので、二人一役という奇手以外はあまり覚えていなかった。一人二役というのはよくあるが、二人一役となると舞台公演のダブルキャストか、成長過程の異なる時期を役者で演じ分けるとか、アクションやヌードのシーンだけ別の役者にすげ替えるボディ・ダブルとかはあるけど、この映画のようなケースはあまり見当たらない。キャロル・ブーケはクール、アンヘラ・モリーナはホットという属性の差はあるが、さりとて女の二面性を戯画化するためというわけでもなく、入れ替わりに何の法則性もない。
「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」は食事にありつけない悪夢を描いていたが、片やこの作品はその性的ヴァリエーションだ。女は媚態を示したかと思うと、徹底的に拒絶する。さながら手を伸ばすと飛び去ってしまう小鳥のよう。かつて見た時は男の妄執を描いた映画と思ったが、あらためて見ると女のしたたかさの方が一枚上手だ。
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