「【明日はタンジール】」欲望のあいまいな対象 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【明日はタンジール】
“あの人たちは、セビリアに宿を取り、明日はタンジールに旅立つ旅行者よ”
あのコンチータの裸のフラメンコを見ていたのは、この映画の製作年から考えて、日本人なのだろうなと、ちょっと苦笑してしまう。
ああした日本人は、当時は沢山いたのだ。
ところで、裸のフラメンコを見たことはないけれども、バックパッカーをしていた時に、僕もセビリアに宿を取り、翌日、モロッコのタンジールを目指したことがある。
この作品は、ルイス・ブニュエルの遺作だ。
男や女の本質に迫っているような気がして、僕は結構好きな作品だ。
この作品の、コンチータは、キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナの二人の女優が演じ、女性の2面性を表していると言われているが、それに加えて、僕は、スケベ親父が、女性に対して性欲が勝り、一人の女性を愛していると口では言っても、肝心な顔さえも実は曖昧にしか覚えておらず、関係を求めてしまうといった皮肉も込められていると強く思う。
あと、コンチータが見せる焦(じ)らしについて白状すると、“いるいる、女性にこういうタイプ!”って、ものすごく同意したくなる。犬へのお預けじゃあるまいしと。
映画は、テロだのギャングの抗争があっても、ブルジョワジーはこんなものだと制作当時は言いたかったのかもしれないが、現代もうわべは豊かになって、自分のことしか考えられなくなっている僕たちの社会も同じなんだと思う。
結局人間は変わってないのだ。
コメントする