「主人公はサンフランシスコで“正しく”成功したのだろうか?」許されざる者(1992) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公はサンフランシスコで“正しく”成功したのだろうか?
NHKBSで放映されたので何度目かの再鑑賞。
私はクリント・イーストウッドの作品では
「マディソン郡の橋」「グラン・トリノ」
「ジャージー・ボーイズ」が好きだが、
この作品は好みではない。
暴力が連鎖する世界を見せられて
心穏やかにはいられないが、
ジョン・フォードが描く西部劇よりも、
ある意味、当時の真実を描いたとの観点は
理解出来る。
しかし、主人公の妻からの影響の貫徹性と
彼女への想いについての描写は疑問だ。
ラストシーンでの主人公の妻の母の
モノローグ「娘が何故悪党と結婚したのか
分からなかった」については、
一人一人の、特に男女間の心はなかなか
うかがい知れるものでは無いし、
この世の中ではいくらでもある人間関係で、
妻がどこまで主人公にプラス影響を
与え続けられていたかについては疑問だ。
サンフランシスコで成功したという主人公
が、「再生は妻のおかげ」と言い、
彼の人生にとって意味ある妻だったと
言いたいのなら、
彼が妻の墓を訪れた様子が感じられない
義母のモノローグは何を意味するのか。
サンフランシスコで本当に“正しく”成功した
のか等、彼の心の中にまだ妻がいて、
悪党を超える人間性が
本当に芽ばえていたのかは分からない。
この時代では度胸と恫喝力だけが
社会を支配する源だったかも知れない、
保安官でも、賞金稼ぎでも、同じように。
周りに恐怖を植え付けて優位に立つ、
そんな非人間的な社会は当たり前のように
あったのだろう。
そんな時代に生まれてなくて良かったと思う
と共に、少しでも油断をすると、似た輩に
この世を支配される時代に成りかねない。
戦前の日本がそんな世界だったろうし、
現代でも良く似た国家や社会が
多数存在しており、
そんな時代にならないことを願うばかりだ。
ご返信ありがとうございます。
私もどこまで内容を理解できているのか、自分の理解がズレていないかいつも考えています。
テーマの分かりやすい映画(『グリーンブック』など)には言及しやすいですが、そうではない映画は色々と考えてしまいます。だからこそ、そういった映画はレビューされる方の力量が表れやすいのかな、とも思います。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。
KENZOさんのレビューの着眼点はどれも参考にさせていただいております。
>しかし、主人公の妻からの影響の貫徹性と
>彼女への想いについての描写は疑問だ。
⇒どこに着目すれば良いのか分かりづらい映画だと感じましたが、
KENZOさんはここに着目されているのか、と思いました。