「そこはうさぎなのか」桃太郎 海の神兵 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
そこはうさぎなのか
東京国際映画祭にて鑑賞。
だいぶ前に観た気がするのだが全然内容を思い出せず新鮮だった。
上映前の解説でもあったとおり思ったより叙情的な場面が多い。特に前半。畑を耕すネコの両親、神社で頭をさげる猿達。相撲で金太郎に負ける人形を見て民家で転げるクマ。
沢山動物が出てきて可愛い。白くてまんまるな三つ子の鳥の赤ん坊とか可愛いのよ。明らかにディズニーの影響はあるがきちんと日本独自の風景や風習を入れている。
たんぽぽがふわふわと降りてくる画を落下傘部隊に重ねる表現がこの映画ならではだった。あとは銃の手入れとかも結構しっかり描く。
前半のアクションのハイライトは猿の三太が兄の制服の帽子を川に落として川に入っていくところ。流された三太を助ける為に兄猿が走り、なんか木をのぼる身軽な動物との連携プレーで滝に落ちる前に弟猿を救い出す。動物達もめっちゃロープをひいていた。
南方の島で象やサイに木を倒させる場面がある。それを指示するのはうさぎで、日本人は自分達をうさぎだと思っているのか、と感じた。
象やリス達にア、アシ、などの言葉を教える場面があり。全員で復唱すると綺麗な日本語だが個別にリピートさせると動物の鳴き声になる。東南アジアの現地の人を日本語がまともに話せない動物にたとえているようにも感じた。そういう意図はないかもしれないが。
終盤に落下傘部隊が海賊が巣食う本拠地に降りる。この海賊はもろに白人の人間だった。瞬く間に降伏し降伏した水兵の中にはポパイもいた。
このポパイの登場場面は劇場でちょっと笑いが起きていた。
総じてよく80年前にこれだけ動くアニメを作ったなというのが驚愕。
印象では鬼である米兵を桃太郎が機関銃で撃ちまくるようなイメージがあったのがそんな場面はない。思ったよりは残酷でないし全体的に可愛い。
桃太郎自体が後半からの登場で主に指示を出す司令官で、戦う場面が意外とない。
桃太郎は米兵と会談みたいなことをやる。米兵がオドオドと英語で喋るのがこだわりを感じた。
明らかにプロパガンダ映画ではあるが、アニメとしての動かす喜び、こだわりも見えて、一口に批判できない。というかすごい作品。ではあるが簡単にほめるのも難しい。
1945年という敗戦の年に公開されたというタイミング的にもすごい。
その現実のままならない悲しさも含めてアニメ好きの人には観てもらいたい作品ではある。
