「ギリギリ若かった駿監督、御大の最初で最後のアクション大作アニメ」もののけ姫 mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
ギリギリ若かった駿監督、御大の最初で最後のアクション大作アニメ
プロデューサーの鈴木敏夫氏の説得によって誕生した『もののけ姫』、当時の
宮崎駿氏の年齢がギリギリ体力勝負でアクション物を作れる最後の時期だと
判断したゆえらしいがこれ以降、御大の作品でここまで苛烈で迫力ましましで
熱気のある作品は存在しない。驚異の作画枚数と本格導入されたデジタル処理
(祟り神の触手の動きや背景の動き等)が織りなす合戦や戦闘シーンの数々は
ジブリ作品随一の迫力を生み出し、久石譲氏の手がける数々の劇中曲もひときわ
荘厳で、主人公が里を出立する際のBGMは圧巻。脂の乗り切った時期に
制作されたのもあろうが、まさにタイトル通りの作品である。
ただ、この感想を抱いたのは今回のリバイバル劇場とその前から積み上げてきた
予備知識を含めた最近の話、初公開時にはこんな感想は全くなかった。
本作は97年に公開されており、これの初視聴は劇場ではなく自宅のビデオ。
当時は小学生なのもあるが、内容が複雑すぎて全然理解してなかった。
あの時劇場に足を運んだとしても楽しめなかったと断言できる。
ちなみにビデオで見た時に浮かんだ感想は『おかゆ美味しそう』だったが、今でも
このシーンは旨そう、ジブリは食事シーンがとにかく美味しそうに描くから好き。
今となって多少は物語への理解力が高まったおかげで話の流れを汲めるように
なり、事態が急変していく本編の流れを初めて理解して見れた。その一方で
本作の結末が一応のハッピーエンドを迎えはするが、例えばアシタカの呪いは
果たして解けきってるのか、たたら場とシシガミの森の対立が解消されてるのか
たたら場を襲った侍連中は全滅したが第二陣が来るのではないかと内容を理解
したからこそ結末に影を落とす不穏要素がかなり残っているようにも見えてきた。
だだ、この作品の主題要素には監督いわく
①子供たちの心の空洞
②至る所に起こる差別
③人間と自然との関わり
④人間の憎悪の増幅作用、殺戮へ突き進む闘争本能
⑤神秘主義と合理主義の対立
など字にしてもさっぱり解らない課題を入れているそうで、これらを取り入れた
監督自身も【解決不能な問題】と評しているのである、なら結末が解決してるようで
解決してないように見えるのは制作者の狙い通りなのかもしれない。
製鉄業は時の権力者がお抱えにすると歴史も証明してますし、だからと言ってあんな辺境まで自分たちで治められるかというと、古代日本ではまだまだ無理だしと、色々考えられる空白はありますね。