「【”人でなしめ、お前からは逃げんぞ!”大統領が犯した事件を目撃した泥棒が、決然と濡れ衣を晴らす物語。娘を持つ者には沁みるサスペンススリラーでもある。】」目撃 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人でなしめ、お前からは逃げんぞ!”大統領が犯した事件を目撃した泥棒が、決然と濡れ衣を晴らす物語。娘を持つ者には沁みるサスペンススリラーでもある。】
ー クリント・イーストウッド監督・製作・主演作品の魅力は数々あれど、私はどのようなテーマでもヒューマンドラマとしても秀逸な点ではないかな、と思っている。-
■リッチモンド大統領(ジーン・ハックマン)を支援する大富豪ウォルター・サリヴァン邸
(E・G・マーシャル)に忍び込んだ泥棒のルーサー・ホイットニー(クリント・イーストウッド)。
物色中にやって来たのは、酒に酔ったリッチモンド大統領と、サリヴァンの二番目の妻クリスティ(メロラ・ハーディン)で、二人は最初はいちゃついているが、大統領がSMプレイを始めた事で、喧嘩になり彼女はナイフで大統領に切りかかるが、物音を聞いたシークレットサービス、ティムにより射殺される。駆け付けた主席補佐官グロリア・ラッセル(ジュディ・デイヴィス)は、ティムともう一人のシークレットサービス、ビルに命じ証拠隠滅を図り、犯人を”泥棒”にしようとする。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・物語は倒叙形式で始まる。最初に真実が描かれ、それを探偵が暴いていくわけだが、今作の”探偵”は、全てを見ていた”泥棒”である設定が面白い。
・身の危険を感じたルーサー・ホイットニーだが、空港のTVで、リッチモンド大統領が、”妻を殺された”大富豪ウォルター・サリヴァンの肩を抱き、事件を非難する様を見て、”人でなしめ、お前からは逃げんぞ!”と呟き、踵を返して空港から戻るシーンが、良い。
■今作では、泥棒であるルーサー・ホイットニーと、彼が服役していた時から仲違いしていた弁護士資格を持つケイト・ホイットニー(ローラ・リニー)との関係性の変遷が、ヒューマンドラマとして、今作の面白みに寄与している。
ルーサーは、留守のケイトの家に行き、彼女の空っぽの冷蔵庫を開けて”こんなものしか食っていないのか・・。”と呟き、そのシーンは描かれないが、娘の冷蔵庫に多くの食料を入れて上げたり、逆にケイトが刑事のセス・フランク(エド・ハリス)と、容疑者であるルーサーの部屋に入った時に彼女が見る、自身が小さい時から法学校卒業の写真など、多数の写真がキチンと揃えて飾られている風景を見て、”こんな写真、いつ撮ったの・・。”と驚くシーンが良い。ルーサーの娘を想う気持ちがこの2シーンで伝わるからである。
・ルーサーは、愚かしきグロリアにクリスティのネックレスを贈り、何も知らずそれを付けていた彼女の姿を見た大統領が、ケイトも事件について知っているのでは・・、と勘繰り、ケイトをシークレットサービス、ティムにより車ごと崖から落とし、重傷を負うシーンから、ルーサーの父親としての逆襲が始まるのである。
入院したケイトを殺しに来たティムを後ろから羽交い絞めにして、許しを請う彼の首に逆に注射を刺して殺すシーンや、サリヴァンの運転手に化けて、全てをサリヴァンに告げるシーンも良い。
<そして、セス・フランクによりグロリアは逮捕され、ビルは自死し、サリヴァンは大統領が妻を傷つけたナイフを持ち大統領の執務室に入って行くのである。
一方、ルーサーは病院で養生する娘ケイトの脇に座り、いつものように絵を描いているのである。彼を見るケイトの表情は明るく、ルーサーも何処か楽し気にペンを走らせるのである。
今作は、大統領が犯した事件を目撃した泥棒が、決然と濡れ衣を晴らす物語であり、娘を持つ者には沁みるサスペンススリラーでもあるのである。>