「新医師の心情変化と患者達の状況描写と演技力」赤ひげ リボンさんの映画レビュー(感想・評価)
新医師の心情変化と患者達の状況描写と演技力
リバイバル上映があったので、初めて見てみました!
赤ひげ先生、思った通り、有能でがんこで人情味があって、不憫な患者のためには奉行所を軽く脅して患者の生活費を出させて(まきあげて?(笑))
でもそんな自分をちゃんと「卑劣なやつだ」と評し。だけど綺麗事を言っても患者には生活費や診療代、薬代もかかるわけで、医療は無料奉仕してるばかりでは現実的には無理、ということも提示していて良かったです。
夫にさせられた人を刺してしまった、と子ども3人連れてやってきた女性には、「いや、酔った亭主が振り回した包丁を、揉み合ってるうちにたまたま刺さってしまっただけの不可抗力、事故だ。うんそうだ!そうに違いない!知り合いの奉行所役人にそう言ってやる!」と人情裁判官のようにもなったり、
まだ12〜3歳?のおとよちゃんを女郎部屋?から連れ出す時には「わしは腕の2〜3本は折る医者だぞ?」と警告した上で、まだつっかかってきた用心棒達を軽く骨折とかさせて「うむ!これはちょっとやり過ぎた!手加減すべきであった!医者たるもの、人に怪我をさせることはいかん!治療だ!」なんていう強くてお茶目?な場面も(笑)
いや〜用心棒達は全員弱すぎるし、10人以上いたんだから1人ずついかないで数人で赤ひげ先生に襲いにいかないと(笑)まぁ、動きを止めるていどの赤ひげ先生の攻撃だから今ならるろうに剣心の剣心が悪党を誰も死なせはしないで戦闘不能にさせた、に近い爽快な場面でした(笑)
また、新しく来た医師が、本人はちょっと挨拶に立ち寄っただけのつもりがここで働くのだ!と言われ冒頭はめちゃめちゃ拗ねていたのに、
映画の最後には別の場所へ栄転出来ると決まったのに「いや、俺は絶対この養生所を辞めない!まだ赤ひげ先生のもとで働くんだ!」と、すっかりこの養生所も赤ひげ先生のことも好きになり、医師の仕事のなんたるかに目覚めて心情が変わっていったことを腑に落ちさせる脚本、かなり秀逸でした!!!
絶対出るんだこんな職場!と思ってたのに絶対辞めないぞこの職場!と思わせてしまう赤ひげ先生、相当魅力的な人物で圧巻でした(笑)(笑)
それと、悲しかったのは各患者さん達の生い立ちやこれまでの人生。誰にでも優しく仏様のように接してしまうのは、その境地に至る相当な悲しい出来事があり、せめて周りの人の役に立つくらいしか自分には出来ないんだ。。って切なすぎました。
また、おとよちゃんは完全に心を閉ざすに至る壮絶な子ども時代だったため、養生所に来た当初の人を全く信じていない威嚇の眼力、物凄い演技力でした。果たして彼女の精神は本当に戻すことが出来るのか?と思えるほど。だから少しずつ正常な心を取り戻し、逆に誰かを看病してあげられるほど回復してきた時には凄く嬉しかったし、彼女が自分と同じかそれ以上に不幸な境遇の男の子に対し、優しくそして「もうなるべく盗みはしないでね。ごはんはあげるから。」と、逆にカウンセラーを自然に始めた時も驚いたし嬉しかったです。
おとよさんは、同室で看病してくれた先生の医学書も興味を持って読み漁っていたし、不幸な境遇の人の気持ちは誰よりも分かる。ここで優秀な女医か、カウンセリングも出来る優秀な助手になれるだろうな、と思いました。
赤ひげ先生の、「貧困と無知をなんとかしなければならない。これが解決すれば病気のかなりの部分は防げる。」という言葉が重かったです。
あと離れに住んでいた患者の彼女、幼少時代からのトラウマに悩まされ続けて怖い思いをするくらいなら原因となる男の人を殺そう、とまでの境地に達していたことはもちろん悲惨なんですが、彼女の世話を命じられたおすぎさんという若い女中さんも、自分の人生を休憩時間も有給休暇も無くただお嬢様のお世話だけに費やさねばならなくて自分の人生が無い、というのも悲しかったです。もちろん赤ひげ先生は、そうさせた雇い主=患者の父親にこれをはっきりズバッと言っていて、それが救いでした。
とてもとても見応えのある映画で、今回見れて本当に良かったです!