「繰り返しの美学」皆殺しの天使 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
繰り返しの美学
ルーカスが辞めてしまったことと、不自然に飼われている熊と羊。絶対何かあるやろ!と、ワクワクしながらの鑑賞だったけど、熊は啼くだけ。3匹の羊は歩くだけ。ルーカスにいたっては登場すらしない。何だ?こいつらが犯人じゃないのか。と、ふと序盤の使用人たちが皆帰宅してしまう不思議な行動と、使用人の長(?)であるフリオの自然すぎる行動。ある意味、ミスリーディングな設定だった。
また、そのフリオが招待客を二度案内するシーンがあり、ディナーでの二度の挨拶があるという不自然さ。二度同じことを言う人物もいたが、なぜ彼ら20人の招待客が閉じ込められたのかということへの疑問がそんな経緯さえも打ち消してしまった。とにかく、原因が全く見当つかない密室劇。普通のホラー、サスペンスであれば、誰かが壁を作ってしまったとか、テロリストに包囲されてしまったとか、強盗犯に拘束されてしまったとか、何かありそうなものなのに何もない。神の力によって“帰る”という意思を奪われてしまった様子なのだ。
最初のディナー以外には食料はなく、二晩、三晩と過ぎる中で空腹や妄想に襲われるセレブたち。死者も出るし、不衛生で悪臭が漂う密室。駆け落ちしたかのような男女がクローゼットで抱き合ったまま、彼らも死んでしまう。水を飲むため壁を壊し水道管を掘り当てるという始末。互いにエゴを剥き出しにして罵り合う者。ホストであるノビレも事態を収めたいが成す術がないのだ。
不条理劇と一言で表現するのは勿体ない。いざというときに何も出来ない富裕層と、空腹になったら紙でも食っちゃう使用人フリオの対比。力強く生きようとする者と厭世観漂わせる弱気な者。20人もの性格を比較するのは困難だが、みんな自己中であることだけは確か。また、彼らには見せかけの信仰心しか持ち合わせてなく、神なんて単なるアイコンにしか過ぎないこともわかる。これを現代でリメイクしたら、性欲描写も凄まじいものになるんだろうな・・・
ROSEさん、コメントありがとうございます。
DVD持ってるのは凄いです!
面白い作品だということは聞いてはいたのですが、今になってようやく鑑賞してみました(汗)
何年か経つとまた観たくなるような不思議な作品ですよね~
どの時点から帰れなくなったのかも謎でしたけど、晩餐の席について直後だったのかもしれません。繰り返しの謎もあったので・・・