劇場公開日 1993年3月21日

「ブラック・ムーブメントの到達点」マルコムX バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ブラック・ムーブメントの到達点

2025年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

斬新

『JFK』などと並び、3時間以上という長さを全く感じさせない傑作。主演のデンゼル・ワシントンはマルコムXが乗り移ったかのような熱演だった。マルコムXについてはこれ以前にジャーナリストの本多勝一の本でキング牧師と並べて触れられていたので知ったが、映画公開時には自伝をはじめとしたマルコムXの関連本が大量に出版されていたのを覚えている。

なおアルバート・ホールが演じている、マルコムをネーション・オブ・イスラムに誘い最終的には裏切るベインズは架空の人物で、実際にマルコムをネーション・オブ・イスラムに誘ったのは彼の姉だったとのこと。マルコムには多くの兄弟がいたが、本作ではほとんど登場していない。

また一ヶ所だけ気になったのは、「あなた方のために私にできることは何かないでしょうか?」と聞いた白人の若い女の子に、マルコムが「何もない」と言い放つシーン。自伝では過去の過ちとして語られるエピソードなので、後の場面でマルコムの後悔が描かれると思ったんだが、そういうシーンはなかった。我々日本人も含めて非黒人はあの白人少女に感情移入するので、それを拒絶したままで終わるというのは大きなマイナス。終盤には白人との融和も描かれていたが印象は薄かった。ただ、そのような欠点はあるにしても、本作が質の高い優れた映画だったことは間違いない。

バラージ
PR U-NEXTで本編を観る