劇場公開日 2024年8月2日

「ほんとうに痛みの伴う出来事は、一時的な感情の爆発で収まるものではな...」幻の光 kpさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ほんとうに痛みの伴う出来事は、一時的な感情の爆発で収まるものではな...

2025年3月2日
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ほんとうに痛みの伴う出来事は、一時的な感情の爆発で収まるものではなく、事実としてあっさり過ぎていって、当の本人が一番出来事に取り残されたようになる。感情のやり場というものがなくなる。それでもかなしみに浸り続けることができるわけではなく、日常的なことは続くし、日常的な感情だって芽生えてくる。でもそれは忘れたということにはならず、時間に溶かされて無くなっていくというのも少し違くて、どんな時にもふとした悲しみとして抱えられている。それは言葉や議論によって解消されるような技術的なものでもない。そんな、難しさを生きていくということ、姿を、この映画は画を介して美しく優しく肯定的に描いている。また、悲しみを抱えている人に寄り添うことがどういうことか、という問題にもこの映画は常に向き合っていた。なぜ死んだのかという答えのない問いに、まさにタイトルそのものである「幻の光」の話を出すシーンがまさにその現れだと思う。
失ったものを抱えたままいることは確かに辛いことであるけれども、その重みを忘れてしまうよりも感じていられる方が、わたしは自分の人生を確かに感じることができると思って。
この映画じたいが、日常あまり出せないそういう感情を思い起こさせてくれる貴重な時間でした。

kp