劇場公開日 1970年7月10日

「時代を超えても尚、の反戦名画には至らずか…」M★A★S★H マッシュ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0時代を超えても尚、の反戦名画には至らずか…

2023年5月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

ロバート・アルトマン、
正直に言って取っ付き難い監督で、
沢山の人物がパラレルに登場する他の作品の
内容もほとんど記憶に残っていない。
そんな中、この作品は戦争を揶揄する
反戦思想映画として解りやすい内容だ。

戦争批判を
ブラックユーモアたっぷりに描いて、
1970年に「イージー・ライダー」や
「明日に向って撃て!」と共に
キネマ旬報で高く評価された映画で、
私としても思い出深い作品のひとつだった。

しかし今回の鑑賞では、
時代的ムードを感じるだけの作品になった。

公開された70年安保前後の時代は、
上記2作品も象徴しているように、
反体制的空気感だけで
観客の支持を得る雰囲気もあったろうが、
現在では引き付けられる内容を感じないし、
展開そのものも、主人公2人が日本に行き、
帰ってのアメフトの後半は、
ただダラダラと話が進んでいく印象で、
退屈以外の何ものでも無かった。

時代を超えて戦争を皮肉った
コメディ的要素を持った作品として、
ルビッチ監督の「生きるべきか死ぬべきか」や
アッテンボロー監督の「素晴らしき戦争」の
名作が思い出されるが、
残念ながらこの作品は、両作品のような、
リアルタイム性を逸しても
尚且つ普遍的な価値を有するまでは
達しなかった印象を受ける。

そんな中で、
公開後のエピソードとして面白かったのが、
脚本でのセリフは1つも残っていないと
脚本家の怒りを買った
アルトマン監督の演出やセリフこそが
観客に受けに受けたはずなのだが、
アカデミー賞で唯一受賞したのが
脚本賞だったという皮肉な話だった。

KENZO一級建築士事務所