「風刺が独特なアルトマン監督の、軍隊を強烈に皮肉ったブラックコメディの快作」M★A★S★H マッシュ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
風刺が独特なアルトマン監督の、軍隊を強烈に皮肉ったブラックコメディの快作
単純な風刺を遥かに超えた、強烈な皮肉とブラックユーモアに加えて、今日的な表現の自由を駆使して大胆に露骨に映画にした作品。映画文法から客観的に評価すれば、実験的な価値に止まるだろう。しかし、このような一見不真面目極まる内容と表現だからとは言え、作者側にはそれとは真逆の実に真剣な戦争批判を掲げていることは、一応認めなければならない。素直でないのは確実だが、主題とする自分が正しいと判断する価値観を、もうヒューマニズムだけでは全てを主張することが出来なくなった、時代の表現の変化を認識するものである。
しかし、これはまた監督のロバート・アルトマンの個性であり、他に風刺が効いた反戦映画ではマイク・ニコルズの「キャッチ22」くらいしか思いつかない。制作から6年ほど経ったが、それを受け継ぐアメリカ映画が誕生していないことは、何を意味するか。つまり、風刺や皮肉やブラックユーモアというものは、時代の表現の代名詞にはなり難く、あくまで作家の個性の特徴に過ぎないという事だろう。それに公開当時の時代背景に身を置いて感じる、風刺の意味が大きいと思われる。
映画はその時代に受けて意味がある。6年前に観ていたら、もっと楽しめたかも知れない。風刺や皮肉が好きな自分でも、これは大胆さと古さを同時に感じてしまったのが正直な感想となる。
1976年 12月1日 池袋文芸坐
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