マイライフ・アズ・ア・ドッグのレビュー・感想・評価
全3件を表示
幸薄い系北欧版ボーイミーツガール
父親は不在。母親は病気で臥せっている。そのつもりはないのに、何かと母を困らせるようなことをしてしまう。面白い話をしようとしても笑顔になるどころか疲れさせてしまう。兄や友人達にはいじられる。そんな辛いときは、片道切符で宇宙に打ち上げられたライカ犬のことを思い浮かべる。あの可哀想な犬に比べれば自分の方がまだマシだと心を慰めているのだ。
その夏は母親を休めるために、叔父夫婦のもとで過ごした。愛犬も一緒にと懇願したが、願いは叶えられなかった。でも叔父の住む村の人達は温かくて(ムーミン谷みたい)、仲間もでき、想像以上に一夏を楽しく過ごせた。
でも秋になり家に戻ると母は亡くなってしまい、再び村に戻ることになる。そして叔父夫婦の家は状況が変わっており、前のように叔父夫婦の家族同然に暮らすことはできなくなり、再び孤独を感じる。せめて愛犬がいればと願うが、既に死んでしまっていた。自分はライカ犬を宇宙に送った人とは違う、と罪悪感を感じる少年。そして何よりも、母がいなくなってしまったことが悲しくて、初めて声を上げて泣く。(ここでもらい泣き。)
でも、つらいことだけではなかった。サッカーとボクシングで仲良くなった女の子サガがいた。
全体として、少年にとっての辛い出来事と楽しい出来事が、少年自身の目線でニュートラルに描かれているのが良いと思った。何より主演の子役くんが登場する犬を上回る可愛さで、サガ役の子も魅力的で、二人の演技がとても良かった。
そして、サガの微笑みと、温かい照明色を背景にした少年の笑顔が交互に映された、ラスト近くのシーンが希望の灯のようで、印象に残った。
とてもよかった
お母さんが結核で、田舎の親戚のおじさんに預けられるとそのおじさんの性格がとても解放的で田舎ものびのびとしていて楽しそうだった。街のガールフレンドもいたのだが、田舎のボーイッシュな彼女も魅力的だった。彼女が胸を見せるのでハラハラした。思春期の少年が遭遇する性的な場面がこれでもかというくらいあった。
ストーリーは淡々としているのだが、場面が豊かだった。ちょうどテレビが過程に普及していく時代だった。主人公はちょっと発達障害っぽくて険しくてタフな顔立ちだった。
幸福なコミュニティとは
悲しくもありますが、幸福な映画でした。
結核の母、歳の近い兄と3人+ワンちゃん1匹と暮らしているイングマル。家族の機能が弱まっているせいか、年齢にそぐわずおねしょするなど情緒に影響が出ています。辛くなると宇宙に打ち上げられた犬を想像し、自分はあの犬よりマシだ、と自分自身を慰めるという、厳しい人生を歩んでいます。
母の病が重くなったため、田舎に住む母方の叔父に一時的に引き取られることになり、叔父が住むガラス工場の村でさまざまな人に出会っていくお話でした。
叔父が住むガラス工場の村が本当に素晴らしいです。
誰も排除せずに受け入れる余裕があります。舞台は50年代末ですが、今流行りのダイバーシティを地で行くコミュニティです。みんな楽しそうに生きているし、精神的に危うい人も、イザとなれば村人たちが抱える雰囲気もある。
イングマルは大好きな母と犬と別れてこの村に来たのですが、どんどん元気になるのがわかります。サッカーやボクシングを覚えたり、男装の美少女サガや優しいパツキンねーちゃんと仲良くなったりと、イングマルは宇宙犬のことなど思い出すヒマなどありません。
この村は、所属する人たちを抑圧しないため、ありのままの姿で在れるのだと思います。だからイングマルは自然と回復していく。
ここに、人が幸福に生きたり、多様性を許容できたりするコミュニティのヒントが描かれているように感じました。もちろん、こんなに善人ばっかのコミュニティはないですが、この村に住めば、真性の悪人以外は割と穏やかになっていくんじゃないかな、と思います。
これからの時代は、幸福の要因が個人因子よりも環境因子の方に重きを置かれるようになってくるのでは、なんて考えています。幸福なコミュニティに所属することが、個人的な幸福のベースとなるのではないでしょうか。フィクションから現実へ、そのままフィードバックはもちろん不可能ですが、エッセンスを学ぶことはできそう。
前世紀の作品ですが、未来を生きる我々に示唆を与えてくれる映画なのでは、などと感じております。
全3件を表示