劇場公開日 2019年9月13日

「変わらぬ関係」マイ・ビューティフル・ランドレット よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

1.0変わらぬ関係

2017年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

 学生のときに、大学の授業で先生が見せてくれたことを思い出してレンタル。
 不況にあえぐサッチャー政権下の英国。イギリス人の若者は職にありつけず、移民2世であるパキスタン人の若者に雇ってもらうという逆転現象。しかし、映画はこの逆転現象を皮肉に描くのではなく、ジェンダーやセックスの問題も横糸に張り巡らして、こののちの先進国社会の諸相を見事に織り上げてみせる。
 性と経済の問題は非常に密接である。
 この映画に出てくる人々の目下の問題は性と金である。性的な関係が金を動かし、また金の切れ目が縁の切れ目となる別れもある。
 30年経った現在、映画に描かれている問題は、あの頃よりも一層明らかな問題となっている。
 確かにサッチャーの新保守主義によって英国経済は復活した。しかしそれは、金融テクノロジーと資本の集中による、富の遍在と格差を前提とした経済成長であった。
 移民や資本を持たない者たちにとっては、事態は一向に変わらず、両者のヤマアラシジレンマのような関係もこの当時から変化してはいない。
 変わったのは、問題を見つめる人びとのまなざしのほうである。

佐分 利信