赤い河のレビュー・感想・評価
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次世代への継承と親子愛
大きな事業を成し遂げるには、ダンスン(ジョン・ウェイン)のようにワンマンなところが無いとむしろ駄目なのだろう。自分がこうしたいという考えを明確に打ち出して、多少強引にでも進めていかないと統率が取れない。そういう彼だからこそ大牧場の創設とか牛の大移動を実行に移せたのだと思う。
そこが彼の美質でもあるが、それは同時に人の反感を買うという悪い側面もある。彼のワンマンぶりは度が過ぎていて、それが養子のマシューを中心とした反乱つながった。しかし、牛の大移動を見事に成し遂げたマシューを見て、前から牛のブランドを継承しようと思っていたダンスンもついに実行に踏み切った。養父の良い部分を継承し超えていくという、次世代への継承と親子愛がストーリーの肝に感じる。
牛の大移動という困難と親子愛を描いた重厚で面白い映画だった。
【”全てのテキサス牛をミズーリまで連れて行き、DとMの烙印を押す。”今作は無骨な男が旅をする中で仲間達と決別するが、或る女性の出現により和解する様を描く、牛の大移動シーンの迫力も凄き西部劇である。】
■若き時に恋人フィンを、ネイティブアメリカンの襲撃により亡くした男ダンスン(ジョン・ウェイン)が牧場を開拓するも、南北戦争の終結後、牛の買い手がいなくなったために、ミズーリまで所有する牛約一万頭を大移動させる計画を敢行する。
しかしその事に当初から懸念を感じていた幼い頃に知り合い、ダンスンを慕うマット(モンゴメリー・クリフト)は、旅を続けるうちに彼と激しく対立し始め、到頭彼を隊列から追い出すのであった。
◆感想<Caution!内容に簡単に触れています。何故ならばこの映画だけではなくモノクロームの映画(だけではないが)、物凄いレビューを書かれている大先輩が複数いらっしゃるからである・・。
・今作は、矢張り、資料に書かれている約一万頭の牛の大移動の迫力がまず、凄いのである。1952年公開作なので、CGではないであろう。
ハワード・ホークス監督は、如何にしてあの数々の大移動のシーンを撮ったのであろう。
特に、ケネリーが夕食時に皿をガチャガチャと落としてしまい、敏感な牛たちが逃げ出すシーンや、河を渡るシーンなど、これだけで評価は4点である。
・ダンスンは旅の初めの頃は、人情に篤い。例えば牛たちが逃げ出した際に、見張りに立っていたダン(ハリー・ケリー・Jr)が遺体で見つかるシーン。
ダンスンは、生前にダンが言っていた”到着したら100ドル貰える。そうしたら家を建てて、妻が欲しがっていた赤い靴を買うんだ。”と言う言葉を覚えており、”アイツの嫁さんに大金と赤い靴を買ってやれ。”と部下に告げるのである。
・だが、食料が乏しくなり、ダンスンも徐々に意固地になって行き、人心が離れていく。元々ダンスンは、恋人フィンを、ネイティブアメリカンの襲撃により亡くした時から、寂しいが故に意固地になっていた心を、ジョン・ウェインが絶妙に演じているのである。
・今作の印象的な人物としては、ダンスンを良く知る剽軽な食事係のグルート(ウォルター・ブレナン)が居る。彼の存在と発言が、作品に幅を持たせているのは間違いがないであろう。
・そして、もう一人は途中から登場する、マットと恋に落ちる強気だが、人の心の機微を見分ける天才であるテス・ミレイ(ジョーン・ドルー)である。彼女はマットの気持ちを察し、単身、新たに仲間を集め、隊を追われた時にマットに“追い付いて、殺す。”と言ったダンスンの元に行き、マットとの仲裁を図ろうとするシーンはとても良い。ダンスンに対し一歩も引かず”私に命令しないで!”とバシッと言い放つと、途端にダンスンの表情は和らぐのである。それは彼女の手首に有った亡き恋人フィンが付けていた装飾品の影響もあるであろう。
・だが、ダンスンはマット達に追いつき、銃を彼に撃つ。だが、いづれの銃弾もマットの身体には当たらない、というか当てないのである。
そして、殴り合いになった時に、再びテス・ミレイが言い放つのである。”ずっと、殴り合っていればいいのよ!”と。
我に返った二人は,かつての様に笑顔で隣同士で座り、ダンスンは木の枝でマットに”牛にDとMの烙印を押そう。”と告げるのである。
<今作は、無骨な男が旅をする中で仲間達と決別するが、或る女性の出現により和解する、牛の大移動シーンの迫力も凄き西部劇なのである。>
■近年、劇場で西部劇が殆ど掛からない。近年(と言っても、随分経つが)Netflix制作の、ジェーン・カンピオン監督の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」や「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール」が限定一週間公開で映画館で上映された時は嬉しかったし、面白かったモノである。Netflixは、西部劇を結構製作している。
ここ一カ月で2作、Netflix制作の映画を劇場で観たが、私は又西部劇を作ってくれることを切望しているのである。
ハワードホークス流西部劇
スケール感が魅力
壮大な西部を舞台に展開する、濃密な人間ドラマ
1万頭にも及ぶロングドライブがホークスの独特な陰翳の映像美で綴られる滋味豊かな西部劇。独善的で非情な独り身男ダンソンと養子のマシユウが対立しながら障壁を乗り越え、真の親子になる道のりでもある。当時の銃社会の荒くれカウボーイの無慈悲な実態も描かれていて、けして気安く鑑賞できる作品ではないが、カウボーイたちの火花を散らす会話劇としての面白さがある。台詞が生きている。唯一の不満は、ダンソンがミレーに招かれ会話する場面の説明過多。ラストの決着を予想させてしまうのが惜しい。
それでも、ジョン・ウェインの心と体が一致しない男の切なさが魅せるし、モンゴメリー・クリフトの「山河遥かなり」から飛躍した演技に彼だけの魅力がある。ウォルター・ブレナンの存在感が二人を支えるドラマの厚みと最後に登場する商社経営者のハリー・ケリー、映画好きには堪らない。
名作!最高の西部劇のひとつ
赤い河とはテキサス州に実際に流れる川
赤土が混ざり文字通り赤い泥水が流れている
もうひとつ1万頭の牛の群れも意味しているのだ
牛の大群が流れる様に大平原を進むさまは正に赤い肉の河だ
1万頭もの牛をテキサス州リオグランデ辺りからミズーリ州多分セントルイスまで1600キロを走破を目指す物語だ
途中そのほぼ三分の二を進んだ辺りのレッドリバーを北に渡った頃、ある事件が起こり目的地が変わる
それでも新たな目的地カンザス州アビリーンでも全行程1000キロ
これを数人のカーボーイだけでやり抜かねばならないのだ
途中インディアンの襲撃にも怯えながらだ
意気揚々と出発する際のヒーハー!の掛け声はこれこそカウボーイの姿
カメラが雄大な西部の大平原を進む牛の大群を見事に捉えている
その牛の大群が大暴走するシーンは圧巻!
CGでは決して出せない本物の映像の力だ
そして困難な一大プロジェクトに挑むリーダーの孤独、さらには世代交代の物語でもあった
これにより単なるアクション映画の西部劇ではなく深みのある人間ドラマになった
流石はハワード・ホークス監督だ
全くまどろむことなく見応えある物語を展開してくれる
ラストシーンのカタルシスは素晴らしい
困難な仕事を自分に代わり達成してみせた若者に、世代交代を認めた瞬間のジョン・ウエインの晴れ晴れとした嬉しそうな顔の輝きこそが、本作のテーマが完結したシーンだ
最高の西部劇のひとつだ
名作として語り継がれるだけある
ブラック経営のロングドライブ。歴史的資料価値あり
ロングドライブの映画って案外少ない。ロングドライブと言えば、テレビドラマのローハイド。
ローハイドは、ホワイト経営。人望のある隊長、能力高く士気の高い隊員、そして牛までもお行儀がよい。
こっちのロングドライブは、ブラック、パワハラ。人望のない暴力の隊長。暴走する牛。
どっちが真実のロングドライブなんだろうか?
どっちが真実のロングドライブなのかはわからないが、ロングドライブの歴史の勉強になる作品。歴史的資料としての価値がある。
細かいが気になることがある。この作品でも、ローハイドでも、主食は牛肉(屠殺しながら食べていく)わけだが、もう一つ、粉もの(小麦ないしコーン)が重要な扱いになっている。アメリカ人って牛肉だけ食べてれば満足なんじゃないんだね、やっぱり人間って、炭水化物が好きなんだね、って。人間の食欲のサガみたいなものを実感する。
牛の暴走のシーンは圧巻。どうやって撮影したんだろう。
ブラックなジョンウエインが思いっきりいけてる。
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