プレイタイムのレビュー・感想・評価
全9件を表示
コメディ映画の究極体(?)タチ崇拝者の為の映画!
タチ演じるユロ氏は、ガラス張りの高層ビルが林立する大都市(パリのどこか)にやって来て、一棟の巨大なオフィスビル(?)に入っていく。そこで延々と一人の男性を探し続けるのだが、彼とのすれ違い、会社=社会という厳格な世界を彷徨って歩き回るユロ氏は哀れというよりも、どこか魅力的だ。
このビル内は殺伐としているが、ふとした瞬間、目を疑うほどに美しいショットが挿入される。
そこから眺めたパリの風景、ほぼ単色の大都市に入り込んでくる観光客のカラフルな服装などがそれで、今まで映されてきた全ての社会人と対比される"遊び人"が見事に描写されている。
後半のレストランでの場面は更に磨きがかかり、
初めは上品を気取った輩の場所だが、ユロ氏が
"偶然"ドアを破壊したことによって、遊び人、ヒッピー、酔っぱらいがなだれ込み、黒と白のみだった人々は緑、桃色といったカラフルさに酔い、遊び心、遊びの時間(=プレイタイム)の大切さに気付くのだった。
それは我々にも同じ事が言える。
この映画は、近代化への批判というよりも、遊ぶことの大切さを伝えたかったのだろう。
それを伝えるためにタチは1000億円以上をはたいてもう一つの世界を創り上げた。(愛読書「e/mブックス ジャック・タチ」から引用すると)「プレイタイム」を観るということは、この惑星に生まれたわたしたちの権利である。」
アメリカ的なるものへの風刺劇でしょうか
映画の作られていた1964年ごろのパリと言えば近郊のラ・デファンス地区の再開発で近代的なオフィスビルが建ち始めた頃でしょう、きっとタチはアメリカナイズされてゆくフランスに失望し危機感を抱いたのでしょう。
驚くのは近代的な建物を撮るために、無いなら作ってしまえとビルもどきをセットで建ててしまったことでしょう。広角レンズを多用し、あえてモノクロのような彩度を落とした色調、基本長回しですから印象的にはとてもクールです。セットや小道具も無機的で、迷路のようなオフィス、無用に複雑なインターフォン、ブーブークッションのような無粋なソファー、ランプのついたモップ、ガラス張りの近代アパートなど風刺に満ちています。またタチの持ち味と言えば無言のパントマイム芸ですから映画でもほとんどセリフがありません、只々、景観や人物を傍観するのみです。
これでは万人受けは難しく興業的には失敗したのも頷けます。作家性、芸風と言ったらそれまでですが、まるでタチが風車に立ち向かったドンキホーテを思わせて胸が痛くなりました・・。
チャップリンのモダンタイムスへの回答
主人公の服装は、帽子、レインコート、傘
これをチャップリンの記号だと読み解けば話しは早い、チャップリン流のドタバタ映画だと思って観るだけで良いのだ
だから、主人公はほとんど話さないのだ
音楽もない、代わりにそのシーン毎の様々な雑音を大きく誇張してちりばめてある
音楽も後半の宴会シーンでつかわれるが、それはあくまでその場の環境の音として扱われている
つまり、会話も音も音楽もあるが実は無声映画としての作り方なのだ
ストーリーと言うべき程のものはない
パリ都心にあるオフィスビルで行われるオフィス家具備品の展示会に、アメリカからそれらの選定に関与できる総務や秘書とおぼしき女性団体が招待されてやってくる
そのビルにたまたま別の商談に来た主人公との二日間のドタバタ喜劇と思えば良い
ものすごい大掛かりにモダニズムな建築物、その内装、設備を見せる
それらをモチーフに様々なギャグをそれこそ雨うられのように仕掛けてくる
何故にそこまで大掛かりにモダニズムにこだわったのだろうか?
それはチャップリンのモダンタイムスへの回答だからだ
合理的で近代的で無駄の無いようで、ありとあらゆる不合理をギャグであげつらってみせる為にあるのだ
それは近代化しアメリカ化するバリへの監督の抗議でもあるのだ
老警備員のまごつきや、朝のスーパーの店頭で老婦人にフランスチーズをわざわざ英語で書いて!と言わせてみせる
そしてモダンなガラス扉には、美しさエッフェル塔や凱旋門を反射して写して見せるのだ
本当のパリは反対側にあると
冒頭は空港のシーンだ
本作公開の1967年はあのモダンで有名なド・ゴール空港は丁度建設たけなわの時期だ
あのようなモダニズムの大規模な建築物は当時大きな賛否論争がまきおこって批判の声は高かったのだ
その後もモダニズムの流れは続き、あの醜悪なポンピドーセンター、ルーブル美術館のピラミッドに繋がる
本作はそれで良いのかとの警鐘であり抗議であったのだ
しかし結局はドンキホーテでしかなかったのは、本作で破産したことであきらかだ
なせ失敗したのか?
それはクスリとはするが、腹を抱えて笑えないからだ
監督はチャップリンのギャグの才能にはとても届かなかったのだ
メモ
序盤のユニークな水銀灯は、水を出す事で、アメリカ人観光客の帽子の花飾りへのジョウロにしたかったらしい。
遠くの人物はコピー板。
ユロっぽい人々。
ドアマンのおじいさんはタチのお気に入り。俳優らしからぬ俳優を選ぶコツ。
仕事人間との対比。その動きをじっと見つめるユロ氏。動きも表情もない。どんな感情??
セバスチャンが通り過ぎるのにも気づいてた?背を向けてはいるが、目で追ってる風に感じる。なんせあの足跡ですものね。
セバスチャンとの行き違い、特にミラー越しのミラー越しのやつすごい。
ユロはバーバラに随分前から気づいてた。
半サイレント
モダンな建物、ガラス張り、音聞こえるの?ユロがバスの発着音に外睨んでる。
なんかしらのドラマが繰り広げられてる風、柱で境界が曖昧に。
例のごとくヒロインとは会いそうで会わない時間が続く。そんでやはりそう上手くは行かない。
間違いなくタチの思い描く理想の女性像。(垢抜けてて、誰にでも分け隔てなく接する、どこか底抜けに明るい。変な行動に理解があり、それに微笑む受け皿がある。)
不自然に感じる間やショットも慣れれば楽しくなってくる。めっちゃ好き。
開店当日の不手際な店。
ロワイヤル風カレイの説明、後ろでは剥がれたタイルににかわを塗っている
白ワイン で煮てからクリームソースをかけます
(ヘラでタイルと床ににかわを塗る)
白ワインとにかわ(獣や魚の皮・骨などを水で煮沸し、その溶液からコラーゲンやゼラチンなどを抽出し、濃縮・冷却し凝固させたもの。接着剤・写真乳剤・染色などに用いる。)
台座に乗らず、味付けが出来ない、設計ミス。目の前で実演するかのようになる。
壁面の白い粉。
自分の髪型をいじるウエイターと料理をべちゃべちゃいじるウエイター。
ウエイターの配膳もだめだめ笑
アメリカの銀行家に葉巻を買ってきたユロの戦友。
お釣りの小銭をどこのポケットか、探って、もういいと貰った。こそこそ確認し、首をひねる。
厨房からの受け取り口が機能しないため、特設台を用意。
変に陽気なウエイター。ごちそうでよかったね。はっはっはー。
まが悪い2人のウエイター。皿と皿、ナイフとナイフが交錯する。
髪型ウエイター、鏡で確認、お客にアピール
続いていた音楽が止まるある瞬間の面白さ
狭いテーブルと椅子、通るのに一苦労
ウエイターはズボン切れる
生クリームの音 ブシュっ
パンの咀嚼音 シャクっ
ドラッグストア コンビニ ケーキ イートイン
並べられたモダンアートチックなケーキたち(少々不気味)、それらのネオン映えを気にするパティシエ
ユロもそのあと来た人もパンを手に取る
コック姿のメニュー看板は担がれると誰かが倒れたみたい。
とにかく邪魔な柱
割れたガラスドアと取手を使ったパントマイム
音のしないドアの製作者 わが友よ!
その流れから偶然バーバラとダンス
仕事人間も映り込む、来てたんや
背中に椅子の跡が付いたのを見て笑う女の背中にも跡が付いてるのを見て笑うユロとバーバラ
身ぐるみ剥がされて屋外で置いてけぼりをくらいウエイターを中継地に
設計ミスのバーの上方の仕切りがこそこそするのには持ってこいだった
暑さでアイスも飛行機の模型もへたる。
めちゃくちゃな空調。バーの飛行機は復活!
奪い取って見せたメニューは上下が逆
それぞれのダンス
酔っ払いたち入場
花のブーケに注ぐワイン
グラスは見えない
小柄で恰幅が良く、両手に袋を抱え、首にカメラを掛けた強面の表情が変わらない男、低重心でバランスが良い。フラフラした細身の男。両手をズボンのポケットに突っ込みブラブラする男。
おそらくどれもタチのお気に入りの人々。
割れたガラスと氷 氷です
割れたガラスの氷をまとったワインの差し入れ
今回はバーバラが観客目線かな
絵描きと黒いドレスの色っぽい女
そこに銀行マン
元歌手は歌う
ドアノブでチップ受け取り
小柄な男も踊る
道を聞いた細身な酔っ払いは柱の模様を指で辿り、陽気なウエイターはそれを見て笑う
細身の酔っ払いは退店するまでずっと壁の模様を辿ってた。ユロたちとほぼ同時に退店。
「パリはすてきだ」の横で水道管の工事。
ベチャっと泥掬って落とすのを少し待ってあげるのざ優しくてかわいい
音楽と動き、ふとした間
DRUGSTORE
後光
ワインを管でこっそり盗む
スポンジとチーズ
店長らしき人に目をつけられる
出口の回る金属をフライパン料理器具と間違える
神父は微笑む
掃除用品の売り子じいさん
控え目で確実なカメラ カチャっ 作動してる実感
デジャヴ的
トラフィックへの展望か
タクシー 水兵帽の少年は舟へ
青トランクと青い服の子供取り違え
そしてメーターでさらなる高鳴り
移動アイスクリーム屋の後ろにはうずまきオブジェ
窓の反射とバスの反応
ユロのスズランと並ぶ電灯
音楽と共につき、音楽と共に暗転
何とも不思議な映画だった
冒頭の空港のシーンでは様々な人物をふらふらと追っているようで、何となく捉えどころがない。
モヤモヤとした気持ちで観続けていると、なるほどこの映画の主人公は「タチ・ヴィル」そのものなのだと得心する。
洗練されたビルや街並みの中で一際浮いて見える垢抜けないユロ伯父さんと、バーバラをはじめとするアメリカ人観光客の団体。
この映画は街のあらゆる場所が舞台となっているけど、主な場面は前半のオフィスと後半のレストランの2つに分けられると思う。
オフィスのシーンでは仕事の面接?のアポイントメントのためにユロがやってくるが、担当者は忙しなく動き回っていてなかなか取り合ってもらえない。
ユロは担当者を追いかけるが、オフィス見学に来た日本人の団体に巻き込まれたり、迷路のようなオフィスに迷ったりで度々見失ってしまう。
担当者もやっと手が空いたと思っても、ユロはいなくなってしまっている。
そんな可笑しなすれ違いを繰り返し、結局会えず終いでユロは街へと吐き出されてしまう。
このシーンまでで、「タチ・ヴィル」という都市の性質があらかた見て取れる。
モダンで洗練されていてカッコイイけど、決して合理的ではないのだ。
見た目重視で機能性は置いてきぼりになっている。
やたらといっぱいあってどれを押したらいいのだか分からないボタン、待合室の中の椅子とカタログが置いてあるテーブルの微妙な距離、複雑に入り組んだ迷路のような構造など。
それらに翻弄されるユロはじめ人々の姿がシニカルな笑いを誘う。
そして、レストランのシーン。
映画はそれまでユロとバーバラそれぞれの行動を追い、彼らは行く先々でニアミスないし鉢合わせをしているのだが、この終盤のシーンでやっと知り合うことになる。
この映画は何においてもこのレストランのシーンが素晴らしかった。
まるでサーカスのような華やかさで繰り広げられる人間模様や小ネタの波状攻撃。
「収集がつかなくて何だかワケが分かんないけど、超楽しい!」といったような熱気と混沌を見事に映像化している。
細部と全体の切り返しが巧みで空気感が画面から溢れていた。
このレストランでも前述の見た目重視は炸裂。
オープン初日を迎えたボールルーム付きの高級レストランだが、客が入る直前まで内装工事が終わらず、いざ営業してみれば案の定不具合・不手際が続出。
そして予想以上の客入りで食材がなくなるわと悲惨な状態に。
でも生演奏の音楽にノった客は、天井が落ちてこようと照明がショートしようとお構いなしに踊り狂う。
エントランスのガラスの扉をユロが粉々にしてしまうと、ドアマンはドアノブを持ち、パントマイムで扉を開閉する。
これは本当に楽しかった。
寝不足でそれまで寝そうだった(…)けど目が冴えた。
映画史上もっとも好きなシーン
ラスト近くのレストランのシーンは映画史上僕がもっとも好きなシーン。あのテンションとユーモアセンス、デザインは何物も勝てない。全編通して人物、物、建築、音、音楽全てがデザインとしてうまく配置されている。ビジュアル的な映画においての最高峰の作品。
全9件を表示