「戦争のばかばかしさ」フルメタル・ジャケット kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争のばかばかしさ
ハートマン鬼軍曹(R・リー・アーメイ)による徹底したシゴキ。一糸乱れぬ隊列をよそにデブ1人が落ちこぼれる。新しく班長になったメガネのジョーカー(モディーン)も彼をかばうものの、夜中に他の二等兵に殴られたりする。そのうちデブのパイル(ドノフリオ)は精神的におかしくなってくる。病気を理由に除隊という手段もあったのだが、なんとか訓練所を卒業する・・・
パイルの狂気に満ちた顔は『シャイニング』のジャック・ニコルソンさえ思い起こす。その彼が実弾を充填しトイレでハートマンを射殺。そして銃口を口に咥えて自殺。背筋が凍るような一瞬だ。
後半は一転して南ベトナムに。情報部に転属となったジョーカー。フエ市の攻防が激化し、のん気に取材する雰囲気ではなくなった。北の砦となった廃墟からは激しい銃火。ちょっとでも先を進めば殺されるといった状況なのだ。撤退したという噂を聞いて確かめにいく先遣隊。また数名のアメリカ兵が殺されたが、スナイパーはたった一人でしかも女性だったという驚愕の事実がジョーカーを唖然とさせるのだ。
とにかく卑猥語のオンパレード。聞きたくもないくらい(笑)。戦争の虚しさ、馬鹿馬鹿しさ、特に南ベトナムに自由を与えるためにやってきたのに、彼らからも窃盗されたりするのだ。虚しさのきわみは最後の行進。血に染まったかのような夕闇の中を、ミッキーマウスのテーマを歌いながら行進する海兵隊たちは虚勢を張っているのか、虚しさを無理に楽しくしようとしているのか。
反戦という言葉はほとんどジョークにもなってしまっているが、空しさだけはよく伝わる。ジョーカーの心理描写がもっとわかりやすければいいのに・・・
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