「【抒情性高き、スピリチュアルな物語。”ベロニカ”を演じたイレーヌ・ジャコブの美しさと、全編を彩る美しくも哀しきトーンの音楽が、作品の趣を高めています。】」ふたりのベロニカ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【抒情性高き、スピリチュアルな物語。”ベロニカ”を演じたイレーヌ・ジャコブの美しさと、全編を彩る美しくも哀しきトーンの音楽が、作品の趣を高めています。】
■内容に触れながら、レビューしています。
1.映画は”ポーランド”のクラクフという町から始まる。美しき容貌を持ち、天性のソプラノの声を持つ”ベロニカ”(イレーヌ・ジャコブ)は、その声の美しさにより、楽団に誘われる。
彼女は、街中で一瞬、自分と瓜二つの女性がバスに乗る光景を見る。
<ここが、後半に効いてくる。上手い作品構成である。>
”ベロニカ”は心臓に不調を抱えながらも、楽団の舞台に立ち、美しきソプラノを歌っているいる最中に、突然心臓発作で倒れる。
2.場面は”フランス“に移る。
”ベロニカ”(イレーヌ・ジャコブ:二役)は音楽教師をしているが、ある日天啓を受けたかのように、突然涙を流し、本格的な音楽活動を辞める。
そんな中、彼女は人形劇を見る。気になった彼女は人形師を探す。彼の名は”アレクサンドル・ファブリ”作家でもあった。
”ベロニカ”に誰からか送られてくる”紐”(”ポーランド”の”ベロニカ”のモノに似ている。)、空の葉巻の箱・・。
”ベロニカ”は心臓内科に通っており、自らの心臓の鼓動の波形グラフに”紐”を重ね合わせる。<このシーンも、巧い。二人の”ベロニカ”が抱えている病を象徴的に表している。>
3. ”ベロニカ”は”アレクサンドル・ファブリ”と喫茶店で出会い、彼の”女性心理の可能性”と言う言葉を聞き、一度は席を立つが、再び彼と会い、恋に落ちる。
<彼に会う前に、”ベロニカ”は父親に”誰か分からないけれど、恋をする・・”と話している。>
”ベロニカ”は”アレクサンドル・ファブリ”の求めに応じ、バッグの中身をベッドの上に広げる。その中に有った、彼女が且つて旅行に行った”ポーランド”のクラクフで映した白黒写真に写っていた自分とそっくりな女性。
”ベロニカ”は、その女性の写真の姿を見た途端、滂沱の涙を流すのである。
<クシシュトフ・キェシロフスキ監督作品は「トリコロール/青の愛」「トリコロール/白の愛」のみ、観賞していた。
が、今作の落ち着いた映像と叙情的な音楽で綴る幻想的な物語で、美しきふたりの”ベロニカ”を演じたイレーヌ・ジャコブが大変魅力的であり、トリコロール三部作のクシシュトフ・キェシロフスキ監督の遺作である「トリコロール/赤の愛」にイレーヌ・ジャコブが出演しているのは知っていたので、鑑賞予定を早めて、近々観ようと思う。
映画とは、一つの作品で出会った女優さんを追いかけるのも楽しいし、好きになった監督の作品を辿ってみるのも楽しいモノである。>