「永遠不滅の青春映画です」フェーム あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
永遠不滅の青春映画です
関連するロックミュージカルを時系列で整理するとこうなります
ジーザスクライストスーパー
1971年ブロードウェイ初演、1973年映画公開
ロックオペラによるミュージカルの革新
ロックミュージカルとは何かを世に示した画期的な作品
コーラスライン
1975年ブロードウェイ初演、1985年映画公開
ミュージカルのオーディションに参加するダンサー達と演出家の物語
ダンサー側から、ミュージカルの裏側の世界の厳しさとその真剣な情熱を描く
オールザットジャズ
1979年映画公開
舞台版は有りません
ダンスの演出家、振付師の物語
演出側の孤独さ、才能を絞り出す為には心身を削る程であることを掘り下げる
フェーム
1980年映画公開
舞台版は有りません
舞台芸術学校の生徒たちの物語
この世界を目指す若者たちの姿を描く
この4作品は4つで一つの物語であるのだと思います
本作はミュージカルを構成する最後のピース
厚いショービジネスの人材は一体どのように大勢生み出されているのか
その人々はどのような若者たちなのか?
どのような夢と熱意を持ってどの様に生きているのか?
それを教えてくれるのです
青春の熱さ、成功(フェーム)だけを夢見て、自分の才能に疑問もなにもない
自分にも華やかな世界に通じる道があるはず
そう信じて疑うこともない
誰もが経験したはずのことが、本作にはあります
舞台芸術のショービジネスだけの話では有りません
学問の世界、商売の世界、技能の世界、スポーツの世界などなど
どの世界にも通じる普遍的な物語です
あまりに舐めて放校されるもの
裏業界の人間に騙されてエロビデオを撮られてしまうもの
様々な失敗、黒歴史を重ねていくのです
自分にもあります、あなたにも有るはず
それでも何となく時はすぎさって、何十年も経ってみれば、あの頃夢見た道から大きく外れているかも知れません
憧れの先輩はハリウッドに行ったものの結局端役止まり、NYに戻ってきてウエイターで食いつないでいます
それでも凄く頑張った方です
最初目指した道でフェームを獲得できるのは、ほんの一握り
その道に残っていても、フェームにはもう手が届かないことがはっきりしてしまっている
下積みのままか、フェームを掴んだ人を支える側にまわるのか、それなりに自分の居場所を作って生きているのです
気付けば全く違う道に進んでいるかも知れません
その道で成功を掴んだ人もいるかも知れませんが、やっぱりそこでも成功するのはごく一握り
何でこんなことをしているのだろうと悶々と生きているかも知れません
世の中の濁流に呑まれて流されて、何となく居場所を見つけて、何とか日々生きている人が大半なのではないでしょうか?
その居場所で小さな喜びを見つけて生きていくのが普通の人間の人生なのだと思います
それでもみんなこんな青春の夢があったのです
21世紀の若者たちも同じだと思います
ダンスや音楽の専門学校は東京や大阪にもあります
今日もそこでは本作のような若者たちの青春があるのだと思うのです
数年前、大阪ミナミのとあるクラブのイベントに行ったとき、ダンスの専門学校生達とおぼしき若者たちを見かけたことを思い出しました
そんなことを思いつつ本作を観ていると、なんか胸が張り裂けてしまうような熱い感動があり、涙が溢れてしまうのです
遠いところに来てしまった
こんな青春は確かにあった
でも今はもう遥かに遠い遠い昔のこと
本作を観て21世紀の若者たちも、いつの日かこんな思いにとらわれるのかも知れません
永遠不滅の青春映画です
傑作です
蛇足
ラルフが敬愛する「フレディ」とは、フレディ・プリンズのこと
もちろんクィーンのフレディではありません
ラルフと同じくプエルトリコ人居住区の出身で、本作のモデルの学校出身のお笑い芸人です
劇中での台詞どおり若くして命を落としたそうです