「寓話化して「アンダーグラウンド」に進化したか…」パパは、出張中! KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0寓話化して「アンダーグラウンド」に進化したか…

2021年9月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

TV放映で同じクストリッツァ監督の
「アンダーグラウンド」を観た勢いで、
DVDレンタルして、この作品も鑑賞。

タイトル名の明るい感じにも係わらず、
随分と重い内容だった。

この作品、カンヌ映画祭でバルムドール獲得
とあったので期待一杯だったが、
戦後スターリンの影響から離れようとする
チトー体制の歴史に知識が無かったので、
「アンダーグラウンド」よりは鑑賞中の理解
が深まらなく感動も逃してしまった印象だ。

全体構成としては、
サラエボでの父親の不在の前半と
何かと説明不足な強制労働地での後半の
展開との繋がりも良く理解出来なかった。

とにかく、子供目線で描く前半の国への憂い
の観点は解りやすいが、
この子の後半の思春期の芽ばえを中心とした
エピソードは、国家の成り行きとは関係なく
男女の愛憎は続くものだとのことなのか、
そうだとしたらテーマが散漫している
ようにも感じられ、
最後まで前後半の構成と繋がりの意味が
判らなかった。

ラスト、「許すか」との義理の兄の問いに
「忘れる、許すのは神だ」との
父親の言葉は印象に残ったが、
クストリッツァ作品としては、
現実描写で母国の歴史の一断面を見せた
この「パパは、出張中!」を経由して、
ユーゴスラビア史の憂いを、今度は一転、
寓話的に描いた「アンダーグラウンド」に
見事に結実したようには思えた。

KENZO一級建築士事務所