劇場公開日 1970年6月27日

「人間パットンを描いたのではなく、より危険な状況の現代を訴えた反戦映画にも思え…」パットン大戦車軍団 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人間パットンを描いたのではなく、より危険な状況の現代を訴えた反戦映画にも思え…

2024年8月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

映画館とTVで
それぞれ一度ずつ観た映画だったが、
パットンの人間性に迫った内容で、
戦争時においてのみ功を奏するような
過激な人物像描写の域を出ない作品
との印象を持っていた。
しかし、アカデミー主要4部門他を獲得
した作品でもあるし、
前回の鑑賞から時間も経っていたので、
改めて、彼の苦悩なりは描かれていたのか
に注目して、
TV放映を機に久々に鑑賞した。

改めて観てみると、
「バルジ大作戦」以上の大作感だったし、
パットン将軍の絡み部分を中心とした
第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の
ダイジェスト版との装いに感じた。

しかし、
途中での多少の自省の場面はあったものの、
期待した彼の人間としての苦悩
なりは何も描かれてはいなく、
今回も、終盤近くにドイツの情報将校の語る
「戦争がないと生きられない男だ」との
言葉そのままの人間描写で終わってしまった
ような印象だった。
しかし、この映画化に際して
遺族の協力を得られなかったとも言われ、
実在の人物像としては
そんなことは無いように感じるのだが、
多分に、
彼を徹底的に“戦争好き”とした
この作品の意味は、
人間パットンを描こうとしたのではなく、
実は、反戦意図の作品であって、
終盤近くでの従軍記者?の質問に答えた
「兵隊も将軍も抜きの…ただ、
生き残った者と死んだ者だけ」
との戦争に関する発言は、
まさに「兵士抜きの兵器」にさらされている
現代の我々が直面している戦争に対する、
より危険な状況を訴えようとする反戦映画
だったのではないだろうかと思わされた。

それにしてもこの作品、
アカデミー賞を7部門で受賞した
米国では評価の高かった作品だが、
日本では
「イージー・ライダー」
「明日に向かって撃て!」
「M★A★S★H」
が上位を占める中、38位と下位に沈んだ。
一人の人間性に迫った作品で、
アカデミー賞を独占した作品が
キネマ旬報の評価でここまで評価が低い
ことも珍しいような気がするが、
日本人の受け止めとしては、
人間パットンへの肉薄が偏り過ぎて、
単なる戦争巨編映画
と捉えられたからなのだろうか。

KENZO一級建築士事務所