「【旅①/旅の始まり】」パーマネント・バケーション ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【旅①/旅の始まり】
ジム・ジャームッシュのデビュー作から6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)
この「パーマネント・バケーション」は1980年の制作で、70年代のアメリカの時代背景や雰囲気をよく表している。
ベトナム戦争は終結した。
しかし、それまでのアメリカ的自由主義が揺さぶられ、帰還兵にはトラウマに悩まされるものも多かった。
その後、カーター政権が誕生したものの、イラン革命が起こり、イランのアメリカ大使館人質事件の発生、ソ連のアフガニスタン侵攻で、アメリカは更に自信を失っていく。
パーカーが、街を漂流(drift)している時に会ったのは、廃墟のような街角にいる精神を病んだ元兵士のような男と、外国人の泣き叫ぶ女だ。
その間、飛行機や爆撃の音が聞こえ、なお、世界は不安定だったことを思わせる。
パーカーの母親も精神を病み病院に入っているが、周りにいるのは同様に精神を病んだ患者と、無関心に振舞う看護師だ。
映画館のポップコーン売りの女はやる気もなく、映画の見所など話せるはずもない。
映画館にたむろする男は、ドップラー効果に執着するも、何を言っているか理解不能だ。
夜ひとり孤独に、誰にも聞かせることもなく路上でサックスを吹くプレーヤー。
部屋にいた無関心な彼女も消えた。
こんな状況の中で生きる目的を見出すことが出来ないパーカーは、きっと、当時のアメリカの多くの若者そのものなのだ。
そして、漂流し、旅立つ。
冒頭で、パーカーがストレンジャー(見知らぬ人、よそ者)について語る場面があるが、パーカー自身がこれから、ストレンジャーになるのだ。
そして、次回作のタイトルの布石であるような気にさえなる。
この作品の中で、ジム・ジャームッシュは、パーカーや出来事を否定も肯定もしていない。
おそらく、こうした生きる目的をなかなか見出すことが出来ないことは、時代時代で世界中の若者には、よくあることなのではないのか。
そして、若者が意を決して彷徨うように旅立つことも。
エンディングで映し出されるマンハッタン。
世界貿易センタービルがそびえている。
これから約20年後、このビルが同時多発テロの標的になるなんて、誰が考えただろうか。
昔も、今もアメリカの価値観、いや、僕達の世界の価値観はずっと揺さぶられ続けているのだ。
そして、若者も人々も、その中で漂流しているのだ。
おはようございます。
勝手ながら、私の「パーマネント・バケーション」のレビューにお名前を使わせて頂きました。当時頂いた有難きコメントと共に。
瑕疵がありましたら、ご指摘願います。
又、お名前を使わせて頂いた事、ご寛恕願います。
レビュー、少しだけ直しました。では。