「月夜に蝙蝠と踊ったことがあるか? バートン×バットマンの化学反応に笑いが止まらねぇ!🤣🤣🎈🎈🃏」バットマン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
月夜に蝙蝠と踊ったことがあるか? バートン×バットマンの化学反応に笑いが止まらねぇ!🤣🤣🎈🎈🃏
”闇の騎士”バットマンの活躍を描くアメコミヒーロー映画『バットマン』シリーズの第1作。
犯罪都市ゴッサム・シティに、蝙蝠の姿をした怪人に関する噂が持ち上がる。その調査に乗り出したカメラマンのヴィッキー・ベールは、パーティーで出会った大富豪ブルース・ウェインと恋に落ちるのだが、彼にはある秘密が…。
時を同じくして、ボスの裏切りにあい薬品タンクの中へと落下したギャングの幹部ジャック・ネーピアは正気を失い、”ジョーカー”という怪物へと変貌を遂げる…。
監督は『フランケンウィニー』『ビートルジュース』の、巨匠ティム・バートン。
大富豪ブルース・ウェイン/闇の騎士バットマンを演じるのは『ビートルジュース』の、名優マイケル・キートン。
ギャングの幹部ジャック・ネーピア/”犯罪界の道化王子”ジョーカーを演じるのは『カッコーの巣の上で』『シャイニング』の、レジェンド俳優ジャック・ニコルソン。
第62回 アカデミー賞において、美術賞を受賞!
デデデデーンデンデン!!🦇♪♪
というダニー・エルフマンのフィルムスコアが最高なバートン版『バットマン』!これを聴くだけでそうそうこれだよこれっ!!という気持ちになる。
ジマーには申し訳ないが、バットマンの劇伴という点では圧倒的にエルフマンに軍配が上がる。次点でテレビドラマ版(1966-1968)を担当したニール・ヘフティ。デデデデデデデデデバットマーン🦇♪♪
本作はバートンの長編監督作品としては第3作目。まだまだ駆け出しと言ったところなのだが、既に彼の世界観は完成している。
ゴシック調でありながらキッチュな作風。月夜をバックに屹立する摩天楼群と黙々とケムリをあげる化学工場というゴッサムのルックはディストピア的でもありサイバーパンクのようでもある。
この異様なまでに練り込まれた様式美には目が釘付け!路地裏一つとってみてもとにかく美しい…💕
作り物感全開でありながら同時に生々しい鼓動も感じる、まさにバートン節全開としか言いようがない作品であり、それがバットマンのコミックの雰囲気と完全にマッチ。原作の持つおどろおどろしくもどこか愉快な感覚を見事に再現してみせている。
このノーラン×バットマンの奇跡の化学反応こそが本作のキモであり、観るもの全てを魅了する魔力の正体なのでしょう。
本作全体に流れる怪奇映画的な風味はその後のアメコミ映画にも強く影響を与えているのだろう。特にサム・ライミが監督した『スパイダーマン』シリーズは完全にこの映画の影響の下にあると言ってよい。アメコミ×ホラーの食い合わせの良さに気がつき、それを現出させて見せたという点で、本作は映画史的に重要な作品であると言える。
本作でブルース・ウェイン/バットマンを演じるのはコメディアンとしてキャリアをスタートさせた俳優、マイケル・キートン。
当時はこのキートンの起用には批判も多かったという。実際のところ自分も初めてキートン・ウェインを観た時には「えー。イメージと違うー…🌀」と思ったものです。チャンベー世代なもので…。
正直今でもブルース・ウェインとしてはイマイチだと思っているのですが、不思議なもので彼がバットマンになるとその違和感が払拭されてバシッとハマるんですよね。キートンバットマンの完全に目がイっちゃってる感じが最高っ!!バットマンとしては歴代No.1かも!✨
対するジョーカーを演じるのはジャック・ニコルソン!
『カッコーの巣の上で』(1975)、『シャイニング』(1980)、『イーストウィックの魔女たち』(1987)と、狂人を演じ続けてきたニコルソン。クレイジーな役を演じさせればこの人の右に出る者はいない。
どう見てもジョーカーを演じるには太りすぎなんだけど、そんなことどうでもよくなるくらいに彼の演じるジョーカーはジョーカーそのもの。普段からジョーカーみたいな役ばっかやってんだからそりゃハマるわな。
余談だが、本作のジョーカーの本名はジャック。演者本人とおんなじ名前。そういえば『シャイニング』でも、イカれ親父の名前はジャックだったような…。
役者と役柄を混同してしまうのもよくないと思うが、ジャック・ニコルソンに関しては名前まで一緒なんだからそりゃ混同しちゃうのも無理ないよね💦
『スーパーマン』(1978)の成功があるとはいえ、当時におけるアメコミ映画の地位は低いものだった。B級のゲテモノくらいにしか考えられていなかったコミック映画にレジェンド中のレジェンドであるジャック・ニコルソンが出演してくれたというのは、今考えてみるとなかなか凄い。ニコルソンもジョーカーというキャラクターに魅力を感じていたということなのだろうか。
本作のジョーカーはとにかく楽しそう!プリンスの楽曲に合わせて踊りまくったり退屈な美術品に落書きしまくったりとやりたい放題!既存の価値観やルールを徹底的におちょくり破壊してゆくジョーカーには、やはり悪の魅力が詰まっている!
バートンも確実にバットマンよりもジョーカーの方に肩入れしてる。この映画を思い返してみても、頭に浮かぶのは結局ジョーカーの登場シーンばっかりなんですよね😅
そんな魅力的なジョーカーを嬉々として演じているジャック・ニコルソン。もしもジョーカーを演じているのが彼じゃなかったのなら、この映画の魅力も半減していたことだろう。ダークなのに多幸感に溢れている、本当に不思議な映画だよこれ。
バットマンとジョーカーが表裏一体な存在であることは今更言うまでもないが、本作では特にそれが顕著。
ジョーカーを生み出したのはバットマンであり、またバットマンを生み出したのはジョーカーである。この2人の存在はウロボロスの輪のような円環構造になっており、それぞれが切り離し不可能なほどに強く結びついた存在であることが示唆されている。
面白いのは、薬品タンクに落下しそうになったジャックの腕をバットマンが掴むという場面。ここ、バットマンの手が滑ってしまったのか、それとも彼が故意に手を離したのか、その答えを明確にしていないんですよね。
もしもわざと手を離したのであれば、それはヒーローにあるまじき行為だが、そもそもこの映画ってヒーロー映画じゃない。この映画で描かれているのは狂人vs狂人の縄張り争い。
不殺のヒーローというイメージのあるバットマンだが、本作ではそんな様子は微塵もない。おそらくキルカウントでいえばジョーカーに勝るとも劣らないだろう。化学工場ぶっ飛ばしてますからね。明らかにやり過ぎ…😅
光と闇の対立ではなく、闇と闇の対立。ダウナーな狂気とアッパーな狂気が覇を競っているだけで、どちらが勝とうが結局支配するの暗黒面。この意地悪さにバートンの思想、彼が人間をどう捉えているのかが表されているような気もする。
問題点はジョーカーが出ている場面は例外なく面白いが、それ以外はわりと退屈なところか。
世界観は素晴らしいのだが、もう少しバットマンのアクションが多めでも良かったのでないだろうか。
また、ヒロインであるヴィッキーがあまりにキャラとしてつまらない。ただひたすら叫んでいるだけでうるさい。
『ダークナイト』(2008)におけるヒロイン描写もかなり問題があったし、バットマンってヒロインの扱い方が難しいシリーズなのかも。
物語はコンパクトに纏まっており歪みが少ない。これは一見美点のようなのだが、主役が歪みな歪んだ存在なので物語が綺麗にまとまりすぎていると逆に違和感がある。
せっかく狂人vs狂人という物語なのに、最後は普通のヒーロー映画のように終わってしまったのはちょっと肩透かし。もっと頭のおかしな展開を見せてほしかった。
とまぁ完璧な映画だとは思わないが、その後も脈々と続く『バットマン』というフランチャイズの方向性を決定づけた、アメコミ映画のマスターピースであることは間違いない。
今のバットマンしか観たことがない観客にこそ観て欲しい一作!
※吹き替え版の出来は悪い。ブルース・ウェイン…渡辺徹/ジョーカー…デーモン小暮って、これ完全に見た目で選んだだろっ!!
吹き替えがイマイチなので字幕に切り替えたが、本作の字幕を担当しているのは戸田奈津子…。ナッチの字幕はどうも性に合わない。日本語が変なんだもん。
吹き替えもダメ字幕もダメ、まさに前門の虎、後門の狼。こういう時、ほんとに英語を真面目に勉強しておけば良かったと思う。