(ハル)のレビュー・感想・評価
全1件を表示
【”パソコン通信”により、知り合った(そしてお互い偽りの部分もありながら)男女の恋物語。森田芳光監督作品の中でも、特に斬新な設定と、それを支える深津さんと内野さんの演技に魅入られた作品。】
ー ”パソコン通信”と言うのは今でいうSNSの遣り取りの初期段階なのだろうか・・。
冒頭から、”ほし”と”ハル”のメールの遣り取りを画面で映し出す演出が、斬新である。
(今作の公開は、1996年である!)
それを支える、”ほし”を演じた深津絵里さんと、”ハル”を演じた内野聖陽さんの、日々の屈託を抱えながら仕事をしつつ、相手の着信を待つ姿が切ない。-
■“ハル”という名前でパソコン通信を始めた昇(内野聖陽)は、“ほし”と名乗る男性と意気投合。
お互いに本名も顔も知らない気軽さから、それぞれの悩みを打ち明け合ったりする仲になっていくが、実は“ほし”は男ではなく、藤間美津江(深津絵里)という女性だったことが判明する。
◆感想
・森田芳光監督作品は殆ど鑑賞しているが、この作品はノーチェックであった。
ある映画雑誌を読んで、慌てて鑑賞した。(現在、午前4時。今日、大丈夫かな・・。)
■結論から言うと、とても面白かった。
理由は、”パソコン通信”のある意味無機質な遣り取りと並行して、昇と、美津江の厳しい日常がキチンと描かれているからである。
二人は、相互補完するように、相手が誰だか分からないからこそ、日々の辛さや愚痴を言い合うのである。
その中には勿論自身の嘘を含めてである。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作で、アクセントになっているのが、戸田菜穂演じるローズであろう。
自由奔放な彼女は、”ハル”の恋人になり、彼と行動を共にするが、別の男と良い仲になるだけではなく、実は“ほし”の妹であったという設定の妙であろう。
更に言えば、“ほし”は東京に住んでいる”男性”のふりをしながら、実は盛岡に住む女性である事である。
・だが、二人は”パソコン通信”を通じて、自分の本名、年齢も開示していく。
そして、”ハル”が東北出張に行った際に、東北新幹線の脇で、白い車で赤い服を着た“ほし”が合図をし、お互いに300キロ出ている車中と外からお互いを捕らえようとする姿。
<ラスト、二人が初めて東京駅で会うシーンは、白眉であろう。
笑顔と、恥じらいを浮かべつつ、最前列の車両に乗っていた”ハル”に素顔で近付いていく“ほし”の姿。
故、森田芳光監督作品と言えば「それから」「武士の家計簿」・・・と、「僕達急行 A列車で行こう」と、外せない「家族ゲーム」と思っていたが、今作を観て森田監督の先見性と、映画構成能力と製作作品の幅広さに改めて、深く頭を垂れた作品である。>
全1件を表示