どん底のレビュー・感想・評価
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明日も明後日も不幸…
いつの時代にも、金も心も豊かな者がいれば、金に貧しく心も貧しい者もいる。
そして、大体は豊かな者は豊かな者同士で、貧しい者は貧し者同士で集まって
暮らすモノだ。
そんな「全てにおいて貧しい者達」が集まった集落。 今日が不幸なら、明日も
不幸…明日も不幸なら、明後日も不幸… どうにもならない状況が、いつまでもいつまでも続く…
そんな時には、とても小さいながらも、自分達でやれる祭りでもやって、心を
慰めるしかない。 だが、そんな僅かな心の猶予の時間も、あっさり崩れ去る…
なら、また下らない人生を続けようじゃないか…
そんな「人間の業」を描いた作品。
演技巧者の見事なアンサンブルに浸る。
Blu-rayで鑑賞。
原作は未読です。
棟割長屋で繰り広げられる群像劇と云うことで、黒澤明監督にしてはかなりこじんまりした作品だなと思いましたが、つくり方がとても実験的でした。「七人の侍」などで行われていたマルチカメラ方式の総決算的要素が強く、入念なリハーサルを重ねた上での本番は結構長尺な長回しで撮影され、キャスト陣の緊迫感と演技の熱量が画面越しに分かるくらいに濛々と立ち込めていて、圧倒されっぱなしでした。本作が上質なクォリティーで成立しているのは、監督の手腕だけでなく、演技巧者な俳優たちによる見事なアンサンブルの賜物だなと思いました。
特に、山田五十鈴の演技が目を引きました。嫉妬に狂った女の壮絶な性を表現するために、目の動きや表情など細かい部分まで徹底的につくり込んでいるように感じられて、筆舌に尽くしがたいほどの強烈な存在感を醸し出していました。
様々な事情を抱えた登場人物たちの織り成す群像は、黒沢監督の貧困への怒りと人間愛に満ちた視線によって、時にユーモラスに、時に残酷に描かれていて、ハッとさせられること度々でした。一筋縄ではいかない人間と云う生き物の複雑さが浮き彫りになり、享楽的な踊りによって高揚した気分がどん底に落とされて終わるラストシーンが印象的でした。
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