都会のアリスのレビュー・感想・評価
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自分を失ったら、見るもの聞くものすべて通り過ぎるのよ。
オールナイト三本のうち、一本目。
全編モノクロの世界。監督の作品は「パーフェクトデイズ」をみたのが最初という初心者で、期待はあった。率直に言うと、まあこんなものかなという変哲のもない感想が残ったのみ。たぶん、このルポライターに共感もないうえに、この少女と一緒の旅は自分ではしないだろうという思いのせい。誘拐犯まがいだし。
モノレール(?)の走るドイツの古い町並みはちょっと興味は湧いた。今はもうないだろう。チャックベリーやジョンフォードの生きた時代だものな。
ヴェンダースの原点が─
なかなかいいタイトルだなと感じている映画ですが、いざ見出すと結構とっついにくいと思ってしまうかも知れません。かく言う自分も前半は相当耐えました。何も起こらないからというわけではなく、むしろ色んな出来事がめまぐるしく展開しているにもかかわらず、敢えてなのか、ずーっと平坦で常に日常の中の一つの事柄としてストーリーが展開していくような印象を受けてしまうので、ぱっと見の楽しさとか面白さといったものは感じられない・・・というのが忍耐を要してしまう原因なのかも─と勝手に分析。
音楽はCAN、というのを後々知って驚いてしまったのだが、というのもあまりに暗く寂しい雰囲気を醸し出している音楽だと感じていたので、あれがCANだったとは・・・という思いです。とにかく、白黒作品ということもあって、非常に暗く寂しいです。
見終わってみて、あの平坦な感じや寂しさや暗さは、作品を形づくる上で非常に効いていたなと思うのですが、映画を楽しみたいからといってこの作品を選択するのはやめておいた方がいいかもしれません。学びとかオシャレとかには最高です。この作品をじっくりと咀嚼しておくだけで、かなりイカした映画生活を過ごせると思うのですが─。
【ひょんなことから道連れとなったドイツの作家の青年と少女の道連れ旅と不思議な交流を描くロードムービー。ドイツの名バンド”CAN"によるオリエンタル調の哀愁漂うメインメロデが印象的な作品でもある。】
■仕事で依頼された旅行記が書けず、自信を失っていたドイツ人青年・フィリップ(リュディガー・フォグラー)。
ある時、ニューヨークで9歳の少女・アリスと出会う。
彼女の母が失踪し、途方に暮れたフィリップは、仕方なくアリスを連れ、ドイツに住む彼女の祖母の家へ向かうことになる。
◆感想
■結論から書くと、今作はヴィム・ベンダース監督が、今や巨匠となる前に暗中模索をしていた時代の作品であると思う。
では、今作が面白くないかというとそうではなく、しみじみと面白いのである。
それは、血縁なき少女アリスの母が失踪した中、ペンが動かず只管に風景をポラロイド写真に収めるフィリップがアリスを故郷に届けようとする善性溢れる姿が、何となく、当時足掻いていたヴィム・ベンダース監督の姿と被ってしまうからである。
彼は、少し面倒な幼きアリスをドイツに住む彼女の祖母の家に届けようとする。
だが、その過程で、二人は子供の様にいがみ合ったりしながらも不可思議なる関係性を築き、旅を続けるのである。
<今作の風合を醸し出しているのは、劇中頻繁に流れる、CANのオリエンタル調の哀し気な短調の曲である。
昨年、公開された「Perfect Days」を観ても、ヴィム・ベンダース監督の曲の選択のセンスは素晴らしいな、と感じた作品でもある。>
雰囲気オシャレ映画
根無し草のような
良い映画
『ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも』にて鑑賞。
今回公開される作品群の中で、製作年が一番古く1973年の作品。
人生に半ば絶望しかけてる男と母親に置いて行かれた?捨てられた?少女の旅物語…少女の祖母の家を求めて見知らぬ土地を右往左往…どこかで見たことのあるようなストーリー…(笑)
妙に湿っぽくなることもなく…(母親に捨てられたと思った少女が泣きはしますが)…物語と言うよりも、正に旅する映像が淡々と進んでいきます…。
観た後に、ずっと心に残るような感じがしない…笑
この旅で特に得たものも失ったものも無く…笑…なんかそんな作品でした。
喪失感というか、明るい未来は来ないのかなという、変な漠然とした悲しい気持ちにさせられました。そういう意味では、なんとも不憫な物語の映画でした。
…「こんな映画も観たよ」ぐらいの感想です。
モノクロなんだな〜
個人的にヴェンダースの最高傑作!全作観てないけど。
うーん、これはイイ!
あの少女ホント良く見つけたよ。
主演のフォグラーと一緒に前作にも出ていたようで、その時すっかりと仲良くなった二人を見て、ヴェンダースはこの企画を考え始めたようだが、このコンビは出逢うべくして出逢った感がある。
ヴェンダースは当初「ペーパームーンと丸かぶりやん!」と思って、後半の脚本を変えたらしいが、100年経って残っているのは、たぶんコッチの方だと思う。
冒頭からラストまでミューラーのカメラワークが本当に冴えてる。
二人が何気なくニューヨークの街中を歩いてるシーンを水平移動で横から撮っているだけでも凄くいい。
アレは本当に映画史上に残る名ショットだと思う。
もう全編を通して素晴らしいショットの連続だった。
16mmの荒い画像が、作品のテイストをより一層リアルに引き立てていた。
孤独感や哀しみを少し乾いたテンダネスとユーモアで包んでいて凄く良かった。
あと、突然のチャック・ベリーのライブは意外だったが、ステージで演奏してた「メンフィス・テネシー」
実はこの曲、この作品のアイデアに影響を与えている。
歌詞の内容を知っている人にとっては、思わずニヤリなのだが、知らない人達にとっては、なぜチャック・ベリーの登場なのか?少し謎だったのでは?
ここは歌詞の字幕は入れなきゃダメだね。
ヴェンダースは『パリス、テキサス』で大好きとなり(主役がライ・クーダーの音楽とも言えたが)、『ベルリン・天使の詩』でイマイチとなってしまい、それ以来ずっと敬遠気味で、ブエナビスタも音楽は素晴らしかったが、映画として特にマジックは無かったし、この間やっと観れた『アメリカの友人』もホッパーを始め役者たち皆んな良かったが、翻案に失敗しちゃってるし、ロードムービーの他2作も未だ観てはいないが…
たぶん、おそらく、この作品がベストのような気がする。
今回のレストア版、傷だらけのフィルムからの修復作業だったらしいが、本当にしっかりと直してくれて、感謝!感謝!大きなスクリーンで観ることが出来て、本当に最高だった。
【ロードムービー三部作の①/欧州とアメリカの融合】
ヴィム・ヴェンダースのロードムービー三部作と呼ばれる作品の最初だ。
どうして、ヴィム・ヴェンダースは、こうしたロードムービーを多く撮るようになったのだろうか。
そんなことも考えたくなる、最初の作品だ。
ロードムービーという名称が定着する前のものを入れると、フェリーニの「道」が相当古いロードムービー作品なのだと思うが、ロードムービーが映画の大きなテーマになるきっかけは、なんといっても、デニス・ホッパーの「イージー★ライダー」だと思う。
日本で、ヴィム・ヴェンダースが知られるようになったのは、「パリ、テキサス」と「ベルリン、天使の詩」が大ヒットしたことがきっかけで、日本では、この作品を含むロードムービー三部作は、この後、相次いで上映された。
「パリ、テキサス」には、ソニーのウォークマン初号機が、「ベルリン、天使の詩」では、クラブで日本人女性が話す場面が収められていることも、日本人のハートをくすぐったのかもしれない。
この「都会のアリス」は、失意のうちにアメリカから帰国するフィリップと、少女アリスの、ちょっとした冒険の旅なのだが、アメリカンドリームを抱いても、成功するのは僅かで、そうした失意の人間を、故郷は受けて入れてくれるのだろうか、自分のアイデンティティはいったい何なんだろうかといったことが描かれていると思う。
祖母の家を探すアリスと旅をし、自身も父親のもとに帰ろうと考え始めるフィリップ。
アリスは、旅を伴にしながら、フィリップに対して父親像を求めているのかと思ったりするが、実は、ほのかな恋心を抱いているのだと確信して、ちょっとほほえましくなる。アリスは、この短い旅を通じて、一気に成長し、大人に近づいたのだ。
アイデンティティとは何かと問われると、生まれ育った場所や所属する集団を考えることが多いように思うし、実際に作品も故郷へ帰る道程を見せているのだが、この冒険譚を通じた二人の成長を見ながら、アイデンティティも実は多様であって良いのではないかと思わせてくれる。
ヴィム・ヴェンダースは、フェリーニもデニス・ホッパーも敬愛しているし、この「都市とアリス」は、ヨーロッパ的なロードムービーと、アメリカ的なロードムービー......というか「イージー★ライダー」の影響を受けた作品のように思えるのだけれども、どうだろうか。
ところで、このちょっと生意気だがものすごくキュートなアリスを演じたイェラ・ロットレンダーは、他のヴィム・ヴェンダース作品に出演しており、今でも女優業を続け、衣装デザイナーでもあり、大変活躍しているようだ。写真を見たら、現在は、ショートヘアでかっこいい雰囲気だった。
"チャック・ベリー"のコンサートに行きたい
アリスとともにどこまでも
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