劇場公開日 1995年12月23日

「ジム・ジャームッシュの象徴的作品か」デッドマン パースィさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ジム・ジャームッシュの象徴的作品か

2013年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

モノクロで描かれた、暗黒の19世紀アメリカ西部が舞台の、薄暗い物語。つまり、これはウエスタンものだろう。
しかし、決して格好良く西部の砂嵐を駆け回る馬とか、酒と女のひしめき合うバーとか、ああいう象徴的なものは1つもない。新しい目線の西部。
良い人間程早く死ぬ時代とどこかで見たけれど、本当にそんな感じで描かれたようなじとーーっとした世界観。

何回か見直したけれど、これはなかなか観る人によっては眠くなったりするだろうなあという印象。
全体的に分かりやすい映像展開はなく、一定のリズムだし音も静かめ。睡魔に襲われた人も少なくはないだろう。
私は一回目は眠たかった笑
案外チョイ役で有名な役者が出ていたりするんだけど笑

私は、これは面白かった。
会計士のウィリアム・ブレイク(ジョニー・デップ)が、詩人のウィリアム・ブレイクに勘違いされ、さらには本当に彼へと化していく。ゲイリー・ファーマー演じるノーボディに言われた言葉「銃はお前の舌だ。銃で話すことを学ぶ、お前の詩は血で書かれるのだ」を真摯に受け止め、結果として、まぐれで当たっていた鉄砲を使いこなし、一発でしとめられる凄腕ガンマンへとなっていくのですから。

ウィリアム・ブレイクという詩人のオマージュ作品でもあるらしく、作品内には彼の詩がちりばめられています。

小舟に乗ったウィリアムが、岸でノーボディが相打ちで倒れる所を見つめるシーン。小舟がゆっくりと岸を離れる、そのスローモーションはあまりにも切なく、夢のように遠のいて行く。死とは、殺し屋の持つ銃によってもたらされるものではなく、自然に起こりうるものなのだと、これから死に行く、あるいはもう死んでいるウィリアムを殺させやしないというノーボディの意思の現れのようにも感じました。

とにかく映像は美しい。ストーリーも深い、いくらでも深読みできそう。
あとは、睡魔に負けないで笑 是非見てほしいです。

パースィ