劇場公開日 1995年12月23日

「【旅⑥/旅の終わり】」デッドマン ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【旅⑥/旅の終わり】

2021年7月16日
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ジム・ジャームッシュのデビュー作から6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)

このジム・ジャームッシュの6番目の作品で、旅のモチーフは終わりになる。

第1作目の「パーマネント・バケーション」が旅の始まりを示唆していたのから考えると、この「デッドマン」は当初から旅の終わりを示すものとして映画製作の構想にあったのだろうか。

そして、この作品は、ある意味、この第1作めと同じで、示唆的だ。

そして、ユニークなのが、旅の始まりが、現代のニューヨークからで、終わりは開拓時代のアメリカと、時代を遡ったかのような感じになっていることだ。

出会いや逃避行の旅については、他の作品にも描かれたことだが、異なるところが、主人公のビル・ブレイクが会計士という職を得ていて、アウトサイダーなどではなく、生きる目的もはっきりしていることだ。

また、出会うインディアンのノーボディも、イギリスを経てアメリカに舞い戻り、アメリカこそが自身の生きる地であるというアイデンティティを持っている。

もう一つ、重要なポイントは、ビル・ブレイクが賞金首として、賞金稼ぎなど追っ手から追われながら、相手を銃で殺して逃れ続けるところだ。

銃社会へのひとつのアンチテーゼだと思うし、やむを得ず銃を使うものも決して幸福ではないと言っているようにも思う。

ビル・ブレイクは小舟に揺られ死地へ旅立つ。

ただ、ノーボディは死地とは言わず、生まれたところに戻るのだと諭す。

旅立ちだが、これは旅の終わりだ。

ノーボディも銃撃に倒れる。

ノーボディが重ねた、詩人ウィリアム(ビル)・ブレイクの影は、幻想だ。

もし、現代のアメリカ人が、開拓時代に古き良きアメリカを未だに見ているとしたら、それは幻想なのだと示唆しているのだ。

そして、そんな幻想は終わりを告げたのだと言いたいように感じる。

ジム・ジャームッシュの旅をモチーフにした物語は、ここで終わる。

ワンコ
bloodtrailさんのコメント
2021年8月10日

ワンコさんへ
広島でも始まりました!
が、見たい映画が溜まり過ぎてて時間調整がままならず、ゴースト・ドッグは見逃し確定です....
工藤夕貴とウィノワ・ライダーは這ってでもw

bloodtrail