「ジョニー、なぜ?」デッドゾーン えふいーねこさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョニー、なぜ?
「アプレンティス」を鑑賞後、無性にこの作品が見たくなりました。以前配信で探したところU-NEXTにあり、その後無くなり、現在また観れるようですが、あえて脳内鑑賞にて、記憶で書きます。(脳内鑑賞ということで記録は本日付けにします)
原作はスティーブン・キング。
平凡な教師だった主人公が事故にあい、長い昏睡のあと目覚めたら超能力にも目覚めていて…という物語。
その能力とはサイコメトリとクレアボヤンス、手が触れたものから過去と、未来までを読み取る、というものでした。
クローネンバーグ監督のシャープで静謐な演出が冴え渡ってます。グロを抑えた時のクローネンバーグは、意外にも純愛を描くのが上手い。
主人公ジョニー・スミスには心から愛する恋人がいたが、昏睡の間に去られてしまい、でもジョニーにとっては失った過去はほんの「一晩」のことで……なんとも切ない。
まだ若いクリストファー・ウォーケンの、おぼつかない表情で杖をつき、黒いコートでゆっくり歩く姿には悲哀と諦観があり、美しさがあります(外見的には事故前より後のほうが断然キレイなのです)
自身の能力に苦しみながら、なんとか日々を生きていくジョニーの前に元恋人が現れ、そのつながりで未来の大統領候補の男を知り…
ここからが最大に恐ろしい。
現在、恐ろしいアメリカ大統領のいる世界に生きている私たちに、現実問題として迫ってくる展開ではないかと思います。
恐ろしい未来を見たジョニーがその後とる行動を、完全な他人ごととして見ることが出来るでしょうか。私は出来ません。
ラスト、恋人に抱きしめられ、「どうしてなの?」と問われたジョニーが「仕方なかったんだ」と答えます。ジョニーの行動の意味を知る由もない恋人は、それでも「愛してるわ」と語りかける…
この一言で、ジョニーは救われたと思いたいです。
ジョニーの行動の意味は、観客である私たちしか知りません(あのお医者さんは、察するかもしれないけど…)。
そのことが余計に、作品を深めていると思います。
バッドエンド中のバッドエンドながら、これほど苦く美しい余韻を引く作品はなかなかありません。
未見の方には今からでも、今だからこそ見てほしい一本。
あでも、このレビューネタバレありにしたから未見の方には読んで貰えないのか…(苦笑)
スティーブン・キング原作映像化としてもトップクラスの出来、またクリストファー・ウォーケンの代表作の1つと思います。
U-NEXTに配信復活してるようなので是非。
コレ勧められて観て、恐ろしげなタイトルにちょっと構えながら、損傷した部分が復元されていくオープニングから一気に引き込まれた記憶があります。
少女連続殺人は羊たちの沈黙、ラストはヒドゥンとちょっと似ているのもなんか微笑ましかった。

