劇場公開日 1987年6月

「悲しきサイキッカーの物語。」デッドゾーン ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5悲しきサイキッカーの物語。

2021年7月23日
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泣ける

悲しい

楽しい

勧められアマゾンプライムビデオで鑑賞。
クローネンバーグ作品を見るのはフライ、ビデオドローム、スキャナーズに続いて4作目。

一見すると地味な印象ながら、一本の映画として無駄なく纏まっていて面白かった。

まず何と言っても目に留まるのは、そのオープニングのクールさだ。

印象的なタイトルロゴの表示。
若きクリストファー・ウォーケンの登場。
今後の展望を予感させる恋人とのデート。
彼の人生を大きく変える事故の発生。
昏睡状態からの目覚め。
…とここまでを僅か10分で描き切る。
怒涛の展開にあっという間に惹きつけられた。

クローネンバーグ映画というとバイオレンス描写が衝撃だが、本作はそういった表層的要素を超えた深い魅力に溢れていた。
人間ドラマ、SFとして実に硬派な内容であり。原作がスティーブン・キングというのも頷ける。しかしこれをビデオドロームと同時並行で作ってたというのだから驚きだ。

主人公を取り巻く環境の変化。
彼自身の精神の変化。
これらがストーリーの中核となるわけだが、これは"肉体の変容"を描いてきたクローネンバーグだからこそ丁寧な描写に成功したのだと思う。
彼にとって肉体の変容も精神の変容も同一のテーマなのかもしれない。

主人公役はクリストファー・ウォーケン。
彼の若く悲しげな佇まい、どこか不健康そうな中にも見える信念。物言わぬ彼の存在感が、本作の切ないストーリーをより印象的なものにしているのは確かだろう。

本作が残酷なのは、未来に起こる惨劇を見通す事が出来ながらも、それを阻止するには自分自身が行動を起こすしかない点にある。
そしてその行動にはリスクが常に付き纏う。

もし自分にそんな能力が備わっていたら…そんな事を想像せずにはいられない。

ジョイ☮ JOY86式。