「Cavatina」ディア・ハンター いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Cavatina
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或る意味、“モンド映画”の側面も織込んでいる、名画の分類に入る作品である。なにせ出演者が、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、クリストファー・ウォーケン等々、名優の数々が演じているのだから間違いはない。
それ以上に、自分が今作を観たいと思った最大の欲求は、主題歌である。この主題歌の曲は本当に切ない。そして綺麗なメロディラインである。この曲が流れると、瞬間に南ヨーロッパに連れて行かれる。余りにもメロディが完成されているので没頭感が半端無いのだ。
そんな完璧な曲がイントロで流れる本作では、もう一つ自分が愛してやまない『君の瞳に恋している』も挿入歌で使われる。これもまた、古き良きアメリカを表現したワクワクする曲である。
ベトナム戦争という地獄を体現した若者達が、救いを求めて行動を起こすプロットは、アメリカという大国の影を正面から捉えた内容として当然ながら思い入れを以て鑑賞できる。前半の悪ふざけが長すぎるのも、後半の狂気のゲームとの対比を強調させるための重要なファクターなのであろう。何よりもロシア系移民が、皮肉にもアメリカの為に自分を差し出す事実は、唯々悲しみを禁じ得ない。PTSDという言葉が無かった時代にこれ程の表現を演出したことも凄いと感じる。
人間は、美しい曲も書ければ、馬鹿な戦争も起こす。なんたる矛盾に満ちた生物なのだろうか・・・
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