劇場公開日 1963年3月1日

「面白い!」天国と地獄 kame-pukupukuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0面白い!

2023年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 自宅で動画配信サービスを利用して視聴しました。

 踊る大捜査線の中で青島刑事が「天国と地獄?」というセリフがあり、そんな映画があるんだなぁと思い続けて20年近く、やっと本作を見ました。

 最初の30分はほぼ権藤邸でのやり取りですが、刑事たちと同じ顔になってしまうような心苦しい時間が続きます。そこから特急こだま号での身代金の受け渡しでの緊迫感からの少年の解放、犯人の登場、捜査シーンへの移行、ここまでの流れがとても綺麗で、完璧だと思いました。
 捜査シーンに入ってからも、随時、権藤の描写を入れることで刑事たちの事件解決への執念が強化されているように見えました。また、捜査本部での刑事たちの報告や、情報を足で集めていく様子も不思議と見ている側を映画の中に没入させていくように感じました。煙突からの色の付いた煙のシーンは、やはり印象に残りますね。
 罪を重くさせるために警察は犯人を泳がせるわけですが、ここからの描写がまた秀逸ですね。警察からの嘘の手紙を受け取った直後、薬を入手するために行ったクラブ、薬が効くかどうか黄金町で試すシーン、実験後タバコの火を権藤からもらうシーン、腰越のシーンと、犯人の感情と性格が見て取れるようになっている構成、素晴らしいですね。自分としては、犯人が歩きながらクラブを見渡すシーンのカメラワーク、黄金町の皆がゾンビのようになっている状況、そこで実験する人間を選んでいる様子、腰越の別荘で犯人が花壇から姿を現すシーンが印象に残っています。どのシーンもサングラスがとてもいい味出してますよね。
 自分としては、警察が報道陣に1,000円札の偽情報を流すように相談しているシーンの記者の「それじゃ空いたところで、ナショナル・シューズを叩くか」というセリフも結構印象に残ってます。
 また、見終わってから自分でも少し驚きましたが、見ている間、犯人の犯行動機をほとんど気にせずに見ていました。普通、犯行動機は重要な要素になってきますし、そういう描写を入れざるを得ないと思いますが、ほとんどない気がします。あえて言えば身代金要求時の電話で小出しにされていたぐらいでしょうか。不思議です。

 面白かったです。

kame-pukupuku