「あの瞬間、彼女たちは間違いなく自由だった」テルマ&ルイーズ 月乃さんの映画レビュー(感想・評価)
あの瞬間、彼女たちは間違いなく自由だった
『テルマ&ルイーズ』は、もう本当に特別な映画だった。
社会の中で見えづらくされている女性の声や怒り、そして解放の物語。
あのラストを観て、ただのバッドエンドなんかじゃないって心から思えた。
物語の中で、唯一まともだったのはハル刑事。
彼だけは最後まで2人を救おうとしてたし、本気で向き合おうとしてた。
でも、それでも私は2人が崖に向かって進むあの選択を否定できない。
例えハルの説得で自首してたとしても、あの時代、あの罪状で、重い罰を受けて、出所後にまた男社会に飲み込まれる未来が待ってたと思う。
だったらもう、今この瞬間、親友と一緒に、どこまでも自由に走り抜けよう――
それがあの結末だったと思うし、私はあのラストが大好き。
テルマの変化もすごく印象的だった。
最初はちょっと頼りなくて、夫に気を使ってばかりで、ふわっとしたスカートかワンピースを着てたんだよね。
でも物語が進むにつれて、芯の強さがどんどん顔を出してきて、最終的にはシャツにジーンズ、腹だしスタイルでめちゃくちゃかっこよくなってた。
しかもその姿が、最初の“ゆるふわ”な時よりずっと可愛くて魅力的だったのが印象的。
服装の変化まで含めて、彼女の“目覚め”をすごく丁寧に描いてたなって思う。
2人の表情も忘れられない。
特にルイーズの「覚悟」と、テルマの「決意と自由」が混ざったような顔は胸に残ってる。
生きていた証を、最後のあのジャンプで焼き付けた感じがした。
美しいという言葉では足りないし、あれをただの「逃避」と片付けるのも違う。
あれは革命だった。小さな、でも確かな魂の革命。
女性としてこの社会で生きることの息苦しさとか、理不尽さに、あまりにもリアルに刺さってくる。
私もフェミニストとして、時代が少しずつ変わっていく今に希望は持ってる。
けど、それでもまだまだ女性たちは多くの不平等や暴力にさらされてるってことを、30年以上前のこの映画がずっと前から描いてくれてたのがすごいと思う。
『テルマ&ルイーズ』は、観るたびに胸がギュッとなるし、語りたくなる。
単なる“女の友情”じゃなくて、“共に立ち上がる”ってことの意味を教えてくれる作品だった。