「極論に痺れる」テルマ&ルイーズ Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
極論に痺れる
「しみったれた平凡な日常に戻るくらいなら、死んだほうがマシ!」
と本気で思ったらこれを観るべき!・・・いや、むしろそんな瞬間に一番観ちゃいけない映画か!
「アメリカン・ビューティー」的な極論。
専業主婦のテルマとウェイトレスのルイーズは、同じような不満を抱えていた。話を聞いてくれない夫、結婚するでもなくいつまでもうだつの上がらない彼氏。そんな日常生活の中では目をそらしていられた「男」という存在へのぼんやりとした苛立ちの塊が、バーで知り合った酔っ払いの男に愚弄されたことで破裂してしまう。咄嗟に彼を銃殺してしまった彼女たちは、事件の真相を隠蔽し逃亡するために次々と罪を重ね、いつしか後戻りできなくなる。最初にさっさと自首していれば・・・
しかし、罪を重ねれば重ねるほど、世間から断罪されればされるほど、彼女たちの表情は明るくなって、強さを増していく。引っ込み思案で自分では何も決められなかったテルマは、ガソリン代のためにコンビニ強盗を働き、平凡なウェイトレスだったルイーズも恋人から大金を借り、自分たちを追う刑事たちを堂々と欺いてみせる。そしてその強さが仇となって、ラストは自分たちを助けようとしていた刑事の情も振り切り、幸福感の絶頂で死を選ぶ。
「なかなかそんな風になんないんじゃね?」と思う私やあなたはきっと現状に満足している証拠。爆発するほどの鬱憤が溜まっていなければ、最初の事件でビビって自首してハイ終了。プロの殺し屋でもあるまいし、隠し通せるはずはないってわかっていながら逃亡の道を選んだ時点で、既に元の日常に戻るっていう考えはなかったんじゃないかなーなんて考えました。
車かっこよかったなー。いい車だからこその逃避行だね。