「キングの真髄はこれっ!、でしょ」1408号室 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
キングの真髄はこれっ!、でしょ
レンタル・ビデオ店をのぞいて借りたい映画がなかったとき、以前の私はスティーヴン・キング原作のホラー映画をよく借りていた。それは、キング原作のB級作品にハズレがないと思っていたからである。実際、「クジョー」や「クリープショー」など、多少の気持ち悪さは残るものの、たっぷりと怖がらせてもらい、面白く見れる作品によく出会ってきた。そして、今回の「1408号室」も、客席の上で飛び上がりそうになるくらい、私は怖がらせてもらった。
心霊現象が起きるホテルやコテージを探訪して記事を書くオカルト作家が、ニューヨークの高級ホテルに伝わる「開かずの間」の1408号室で体験する恐ろしい一夜、というだけの実に単純な内容のこの作品は、主人公の作家を呼び寄せた者がわからない、1408号室で恐ろしいことが起こるようになった理由やきっかけが不明、など肝心なことが何一つ説明されていない欠点を気にしないで見れば、ディズニーランドのホーンテッドマンションの百倍くらいの怖さが体験できる、実に面白いホラー映画と評価していいと思う。それは、実はほとんど幽霊など信じていない主人公の感性に観客が近づけば近づくほど、描かれる恐怖が、見る者にリアルに伝わってくるからだ。「ショーシャンク」や「グリーンマイル」のような作品よりも、スティーヴン・キング本来の魅力は「1408号室」のような単純に怖さを感じさせてくれる作品にあると思うのは、私だけだろうか。
ところで、私は以前からオカルトを得意とする作家は、「怖がり」なのかどうか疑問だったのだが、この作品の主人公のように、ほとんどのオカルト作家はあまり幽霊の存在を信じず、「怖がり」でもないようだ。しかしスティーヴン・キングはこの作品の中で、オカルト作家は「怖がり」であるべき、と提唱している。そう、主人公が「怖がり」ならば、1408号室に入らずに済んだのだから…。