チャイニーズ・ブッキーを殺した男のレビュー・感想・評価
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歳を経るごとに深く染みていくカサヴェテス作品
若い頃は全く魅力がわからなかったカサヴェテス作品。でもこれが20年経つと自分でも驚くほどのめり込んでしまうのだから不思議なものだ。とりわけ私が衝撃を受けたのが本作である。やはりセリフで筋書きを説明する野暮は一切しない。相変わらず、俳優の動きや表情、些細なやり取りから話の輪郭線を浮かび上がらせるやり方だ。そこに今回はもう一つの要素として”ハードボイルド”が加わる。ストリップ劇場のショーを取り仕切る支配人でありながら、借金がかさみ、殺人を強いられる主人公。そんな崖っぷちまで追い込まれた男が、最後までショーの芸術性を気にかけ、芸術家精神を貫こうとする。彼の心境はおそらく娯楽性と芸術性の間で揺れるカサヴェテス本人のものでもあるのだろう。映し出されるショーが笑ってしまうほどのクオリティであることも巡り巡って胸を鷲掴みにする決定打となる。この歳になってカサヴェテスの面白さに泣かされるとは思わなかった。
長い
特集4作目に
けっこうよかった
すごくだらだらしていて、誰がチャイニーズ・ブッキーなんだと思っていたらやっと話題になって殺しに行ったらすぐ死んだ。主人公は確かに殺した男だ。結局彼は、ポーカーではめられた気の毒な人だ。無制限で金を貸してくれるとか、ひどい話だ。しかもギャンブルの負けで借金なんて手元に何も残らない、つらいだけだ。
途中でトイレがどうしても我慢できなくなってラスト10分の時点でトイレに行く。ストリップの楽屋でみんなに話をしている場面で、ちょうど道化師みたいな太ったおじさんに話しているところで、2分くらい見られていない。何かいい話があったかもしれないけど、全体的にゆるゆるなのでまあいいかなという気分だ。
場末感がたっぷりで見ていて気持ちがいい。主人公の佇まいも哀愁があって魅力的だ。
主人公のアホさにはちょっと引いてしまった。しかしそこはカサヴェテス...
主人公のアホさにはちょっと引いてしまった。しかしそこはカサヴェテス独特の雰囲気に魅了される。カサヴェテスのあの撮り方は俳優部を信じているとともに、
映る範囲を狭くして予算を抑えているのが銃撃戦前後でよくわかった。
見てよかった。
劇場で観たかった
哀愁漂う素敵な生きざま
"クレイジー・ホース"
これぞ男が惚れる男
ベン・ギャザラ演じるコズモはストリップクラブのオーナーであり、演出家でもある。場末の水商売だが、自分のクラブとその従業員を常に気にかけている。お世辞にも客を魅了するショーとは言えないが、これにたずさわるストリッパーの女たちや「伊達おとこ」、バーテンを彼は家族のように愛している。
そんなコズモがやくざにまんまとはめられて、全財産を失うか、そのやくざと敵対するボスを殺すかの選択を迫られることに。
出だしではただのストリップ経営者とばかり思っていたコズモが、冷静沈着に敵ボスを葬り去り、手負いの状態で何とかストリッパーの一人の家に逃げ込む。
ここまででコズモがただ者ではないことがなんとなく観客には分かってくるのだが、ついにやくざに連行されてしまってからの彼は、すでにその落ち着きと度胸でやくざたちを凌駕してさえいるのだ。男の風格に満ち溢れ、それはゴルゴ13や高倉健もかすむほどである。
そんなコズモと堂々と殴り合ったことのあるやくざの一人は、コズモに感じ入ったあまり組織の命令に背いてしまう。
やくざたちを返り討ちにしたコズモはクラブへ戻り、わき腹からの出血にもかかわらず、スタッフへの愛情を込めて最後のショーのMCを務める。
仕事と部下をこれまで愛する男はなかなかいない。こんな男がいたら、惚れてもいいと思わせるものを、ジョン・カサベテスが積み上げた。彼の人物造形が最高の作品。
それにしても、けがをして逃げ込んだ黒人ストリッパーの部屋に「リアリティ・バイツ」のポスターが貼ってあった。スクリーンンに漂う雰囲気からこの「チャイニーズ~」が70~80年代の映画だと思いこんで観ていたのだが、「リアリティ~」より後に撮られたものだと分かって驚いた。このように撮影時期をそれとなく観客に伝える以外に、何か意図があって「リアリティ~」のポスターを小道具に使用したのだろうか。このことだけが頭に引っかかる。そのほかはコズモの漢気にやられっぱなしであった。
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