「男の美学とロマンを描いた娯楽映画」300 スリーハンドレッド Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
男の美学とロマンを描いた娯楽映画
総合:85点
ストーリー: 65
キャスト: 75
演出: 95
ビジュアル: 90
音楽: 65
幼いころより信念を持って自分を鍛え上げ続けてきた熱い男たち。彼らの無謀とも思える命を懸けた戦いの中に、誇り高き男たちの生き様を見出す。それに共感できるかどうかは、この映画を好きになれるかどうかの分かれ目の1つになるかもしれない。
これは歴史に忠実な映画というよりも、歴史を基にしたとても血生臭くて男臭い娯楽アクション映画である。多くの男が夢物語のような甘ったるい女性好みの恋愛映画にのめりこめないように、おそらく多くの女の人はこの男臭い映画はあまり好きではないでしょう。
戦闘シーンはこの映画最大の見所。普通の戦闘描写といえば、出演者の危険性がないようにまた視聴者に何が行われているかわかるように筋書き通りにゆっくりと演技する。だがこれだとどうしても迫力がない。あるいは実戦に近い速さでの撮影ならば、何をやっているのかわからなかったりする。だがそれでも多くの場合は本当の実戦並みの速さなわけではないし、実戦の緊張感があるわけではない。
この映画では戦闘の途中でスローモーションを取り入れて描写することにより、どうやって相手を倒しているのか戦闘の技術的なことがはっきりとわかるようになっている。それは私のような格闘技経験者にとってはもちろん、一般の人々にも戦闘の技術を映像で解説して理解させてくれる。これはまるで格闘技の試合のKOシーンをスロー再生で放送しているようですらある。
また個人の技術だけでなく、集団戦法の描き方も良い。普通の歴史戦争映画といえば多数の人が突撃をするだけ。それを遠くから撮影して全体を描き、時々個々の斬り合いを描くだけと言うものが多い。しかしこの映画ではファランクスという集団戦法をわかりやすく撮影しており、個々だけでなく集団においてもどれだけの訓練を積んでいるのかが間接的に描写される。それは何故スパルタの戦士が強いのか、スパルタという国の軍隊が強いのかを物語る。
映像も迫力がある。娯楽映画なので現実無視した誇張された描写があるのは事実だが、それはこの映画だけの専売特許ではない。アクション映画の殆どがそんなものです。それを理解していれば映像の良さだけを素直に楽しめる。
生首が飛んだり血が噴出したりと残虐な描写が多いと言われる。だが実際の戦闘では腹を切られて内臓がはみ出したり頭蓋骨を割られて脳が損傷して体が痙攣したり返り血を浴びてそれだけで全身が血だらけになったりするわけなので、それを考えればこれでもまだまだ生易しいとも言える。戦闘の迫力を全面に押し出すためには、むしろこのくらいは描写する映画が時にはあっても良い。