「ポロのルーツは馬球?」女帝 エンペラー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ポロのルーツは馬球?
シェイクスピアの『ハムレット』をモチーフとした五代十国時代の中国宮廷ドラマということで、予習のためにローレンス・オリヴィエの『ハムレット』(1948)をチェックしてからの鑑賞となりました。別に知らなくてもよさそうなのですが、『ハムレット』の背景となるヨーロッパの文化・宗教などと比較しても面白いのかもしれません。数年前には日本においても皇位継承問題が取り沙汰されていましたが、どこの王国をみても直系男子が優先順位第1位。これを不満とする王の弟が王を殺して強引に王位を引き継ぐといったことから発展する物語です。
この『女帝』ではタイトルが示すように、皇后ワン(チャン・ツィイー)は原典とは違い、したたかな女性であり、皇帝の弟と結婚するのも策略的だったように思われる。息子であるウールアン(ダニエル・ウー)とは血が繋がってないうえにウールアンが年上であることもあって、いつでも乗り換えれるような立場だった。皇太后と皇后、どちらを選ぶかという一つの見せ場においても、そういう深い意味が隠されていたような気もします。また、「生きるべきか死ぬべきか」という有名なハムレットの台詞がないのも特徴のひとつ。キリスト教における自殺の問題などが存在しないことが原因なのでしょうけど、逆にハラキリシーン満載となってしまってる。
大臣やその息子や娘オフィーリアにあたる人物も登場しますが、彼らの役割や生死は『ハムレット』と全く異なっています。大臣は死なないし、娘チンニー(ジョウ・シュン)は狂わないし、息子はウールアンとは戦わないうえに彼のピンチを救ったりします。こうしたプロット勝負の手法は意外性もあって面白いのですが、『ロミオとジュリエット』のプロットまで入れてくるのではないかとハラハラしながら観てしまいました。
冒頭から、竹林でのワイヤーアクションシーンや巨大な秘密基地のような修験場なんてのも神秘的で、緑の背景、白装束と黒装束、そして血の赤というコントラストで度肝を抜く視覚効果個人的には馬球(ポロ)のシーンが好きだ。『グリーン・ディスティニー』や『HERO』などには及びませんでしたけど、残酷さやセクシー度では上回ってました。しかし、間延びしてしまうシーンも多く、眠くなってしまうことも確か。「仮面を被って心を見せるな」と皇后も息子に忠告してましたが、チャン・ツィイーは表情を隠しすぎ!結局、ウールアンへの想いと復讐のための行動と思わせつつ、自分の保身のためと出世欲があったのだろうと想像でき、ラスト近くになってタイトルの意味が重みを増してくるのです・・・ただし、女帝はエンプレス(ニップレスとは違います)。